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米韓FTAでは、韓国側は98.2%、米国側は99.2%の自由化率を実現している。米豪FTAでは米側99%、豪側99.9%。中国・ニュージーランドFTAでは、中国側97%、ニュージーランド側100%。中国は同様に、シンガポールやチリに対しても97%の自由化率となっている。
日本は97%の中国に比べて、最高で12%以上も差がある。1%は90品目に相当する。12%となると、中国の方が1000品目以上も関税撤廃している品目が多いことになる。
韓国、米国、豪州の方がさらに多い。GDPに占める農業比率が大きいペルーでさえ、米国とのFTAで自由化率が99.3%と日本より10%以上も高い。2009年に仮署名された韓国とEUのFTAでは、EU側は99%を超える自由化率を達成している。
こうした過去5年に結ばれた協定をみると、主要国がFTAを結ぶ際に、自由化率97%以上という水準が標準となっている。お互い自由化を目指して結ぶなか、日本だけが10%以上も低い水準の85%で許してとの主張が通用するはずがない。
日本は例外品目を抱えすぎ!?
ではなぜ、日本の自由化率はそんなに低いのか。ここでようやく登場するのが農産物である。
日本がFTAで関税撤廃したことがない品目は940ある。そのうち9割を占める850品目が農林水産物(農産物725、水産物95、林産物30)なのだ。
コメとコメ関連品目だけで34品目もある。もみ、玄米、精米、砕米、米粉、穀物のペレット、ベーカリー製品製造用の混合物及び錬り生地、米菓生地、もち、だんご、その他これらに類する米産品などである。
それより多いのが、小麦、大麦、麦芽、デンプンなどのコメ以外の穀物品目の約40。さらに100品目を超えるのが脱脂粉乳、バターなどの乳製品。その他、穀物、ミルクなどの調整品130品目やテンサイ、サトウキビなどの糖類10品目である。
これらを合わせた350品目について、日本は一貫して関税撤廃の「除外」を相手国に求めてきた。つまり、一切自由化をする気のない除外品目が全品目の4%を占め、これだけ除いても標準的な自由化率97%を満たさない。加えて、スタンドスティル(「留保」または「再協議」)を求めている品目が250もある。
関税撤廃以外でも、日本は例外を求めている。数量制限だ。いくら関税がゼロの品目でも、「年間100kgしか輸入できません」と限度を定めれば、実質、禁輸しているのと同じだ。同じゼロ関税でも自由化度合は極めて低いことになる。
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浅川芳裕 アサカワヨシヒロ
農業ジャーナリスト
1974年山口県生まれ。1995年、エジプト・カイロ大学文学部東洋言語学科セム語専科中退。アラビア語通訳、Sony Gulf(ドバイ)、Sony Maroc(カサブランカ)勤務を経て、2000年、農業技術通信社に入社。元・SOGULマーケット専門官。元月刊『農業経営者』副編集長。現在ジャガイモ専門誌『ポテカル』編集長。2010年2月に講談社より発行された著書『日本は世界5位の農業大国-大嘘だらけの食料自給率-』がベストセラーになる。最新刊に『TPPで日本は世界1位の農業大国になる ついに始まる大躍進の時代』(KKベストセラーズ)がある。
農水捏造 食料自給率向上の罠
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