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新・農業経営者ルポ

通勤農業が生み出した創意工夫とipad活用術



圃場までは約1時間かかるどう対処したか?

 細木の自宅は先述の通り高知市行川にあるのだが、今では圃場はこの地にはない。中山間地のため、日照時間が短く、ショウガが大きく育たないのである。そのため、行川のショウガ生産者の多くは、四万十川町や南国市、香美市など、高知市の近隣に農地を借り、車で「通勤」して生産している場合が多い。細木の圃場に行くにも、自宅から約25km離れた南国市田村にある。高速道路を経由しても、約40分かかる。

 2.2haにも及ぶ圃場は転作地だ。平地で日照時間が長く、ショウガ栽培には適した場所なのだが、位置関係に多少問題がある。周囲は水田に囲まれているのだ。

 「ショウガは非常にデリケートな作物。用水路からあふれた水が少しでも畑に入っただけで、雑菌でやられてしまいます。生産しているのが種ショウガですから、供給責任は重いわけです。だから夜中だろうと何だろうと、雨が降り出したら心配で仕方ない。いざという場合には、すぐに駆けつけて対処しなくてはなりません」

 もちろん、畑が自宅に隣接していればすぐに様子を見に行けるが、この距離ではそうはいかない。しかも、行川と南国市では、天候が違う。行川が晴れていて、南国市が雨ということもある。そこで細木が利用しているのが、圃場を見渡すライブカメラだ。


360度回転、照明付きで24時間フル監視可能

 細木が、ライブカメラの設置を思いついたきっかけは、高知県の東端、徳島県との県境にある東洋町が設置しているライブカメラを知ったことだった。

 東洋町は、サーフィンの国際大会も開催されるほど、サーフィンのメッカ。しかし、高知市内からは車で2時間以上もかかる距離にあるため、たとえば高知市内に住むサーファーたちが「ちょっと波の様子を見に行く」というわけにはいかない。そこで東洋町は、サーファーの便宜を図るため、数百万円の費用をかけて海岸にライブカメラを設置し、波の様子をパソコンで確認できるシステムを導入したのだった。同様のシステムは、やはりサーファーに人気の高い四万十市の海岸にも設置されている。

 細木は、このシステムの存在を高知新聞の記事で知った。「これは使えるんじゃないだろうか」と思った細木は、すぐさま東洋町役場に問い合わせの電話を入れた。すると、NTT西日本の技術で作られたものであることがわかった。担当者を紹介してもらい、面会の機会を得た。畑を監視するカメラのシステムを作ってほしいと依頼すると、二つ返事で引き受けてくれたという。

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