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土門「辛」聞

コメ先物市場のしくみを大解剖!!取引価格は既得権益を崩せるか

72年ぶりに再開されたコメ先物市場――、欧米有力メディアも大きく報じた。初取引のあった市場の様子を、フランス通信社「AFP」の東京電は、「JApAn rice futures soAr on nucleAr feArs」と紹介した。rice futures:「コメ先物市場」。soAr:「飛行機や価格などが高く舞い上がること」。ここまではよいとして、on nucleAr feArsのフレーズにはちょっと複雑な思いがした。「原発事故不安」が相場高騰の原因と説明しているのである。

 72年ぶりに再開されたコメ先物市場――、欧米有力メディアも大きく報じた。初取引のあった市場の様子を、フランス通信社「AFP」の東京電は、「JApAn rice futures soAr on nucleAr feArs」と紹介した。

 rice futures:「コメ先物市場」。soAr:「飛行機や価格などが高く舞い上がること」。ここまではよいとして、on nucleAr feArsのフレーズにはちょっと複雑な思いがした。「原発事故不安」が相場高騰の原因と説明しているのである。

 海外メディアが注目したのは、そのタイミングにもあった。世界の株式市場は暴落の連鎖でパニック・モードにあった。そんな中で、日本のコメ先物市場が買い一色だったというのは、やはり珍しいニュースには違いなかった。ただその原因が原発事故というのは素直に喜べない。

 まず初日。東京穀物商品取引所(東穀取)、関西商品取引所(関西商取)とも買い一色でスタートを切ったが、値段がついたのは、後者のみ。北陸産コシヒカリ(福井、石川産)の平成24年1月きりに、1俵(60kg)1万9200円の値段がついたのだ。両県産コシヒカリで直近の相対価格、つまり全農が卸に売った価格だが、石川産は今年6月の時点で1万4251円で取引されていた。それとの比較では5000円近くも高騰したことになる。昨年全農によって安値に設定された概算金のことを組合員農家は疑問に思うだろう。

 次いで2日目。前日の相場展開に東穀取は、初取引が終わってすぐに基準価格と値幅制限を一気に引き上げて対抗した。これを9日付け読売新聞は、「コメ先物、準備不足露呈」と批判した。だが評価してやるべき点もある。基準価格と値幅制限を、すぐに市場実勢に近づけたことだ。農水省“直営”の市場(コメ価格形成センター)だったら、これだけスピード感のある運用改善などは望み得なかっただろう。

 2日目は、初めて取引が成立、1俵あたり1万5870円(中心限月の2012年1月物)で日中取引を終了。10日付け日経新聞は、「前日気配値の1万8500円に比べ大幅に安いが、その後の夜間取引で上昇するなど不安定な値動きが続いている。売買高は6765枚(枚は最低取引単位)で当面の目標だった5000枚を上回った」と伝えた。

 コメ先物市場は、あくまでも2年間の試験上場だ。十分な取引量が見込めなかったり、価格乱高下でコメの生産や流通に混乱が生じたりすれば、本上場は認められないという条件付き。本来は、投機筋がはやし立てる相場でなく、実需筋たる生産者、集荷業者、流通業者、農協が参加して、先物市場を大切に育ててもらいたいものである。

 コメ先物市場に対し大手紙は、やや手厳しいが、筆者は逆の評価を下している。その一つが、市場開設の目的だった価格形成の透明化に一歩近づけたという点である。少なくとも公明正大な市場で価格を形成したのは事実である。その価格に対し、いろんな意見があることは承知している。ただ、全農が一部の有力卸と談合で決めていた価格がいかに不透明なものであったかを満天下に示したという事実はある意味で画期的であろう。

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