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【土門「辛」聞】
東電相手の補償交渉で問えるか?政府と東電トップの無責任さ
- 土門剛
- 第85回 2011年09月22日
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原発依存か、脱原発か――。東京電力(以下、東電)福島第一原子力発電所事故(以下、原発事故)をめぐる政府と東電の当事者能力を欠いたような無責任な対応を見せつけられると、この国で原子力発電所を稼働させることは、国民をただ危険にさらすことになるだけではないかと思うようになった。
原発事故から半年という節目で菅直人前首相が、各メディアに「あの時はこうだった」と語り始めたことは、それを見事に証明しているように思えてならない。
原発事故が起きれば、原子炉格納容器の内部圧力を下げる「ベント」と呼ばれる作業を適切に実行しなれば、格納容器が損傷し、炉心溶融が進む。これを防ぐには、ベントを実行するための適時・適切な初動対応が求められる。原発事故の検証はこれからも続くが、事故後の初動対応が適時・適切なものがあったかが最大のポイントになるのではなかろうか。その初動対応について菅前首相は、退任直後の9月12日、NHKテレビにこう語っている。
「ベントについては、関係者全員が一致してやるべきだと判断しながら、実行が遅れた。その理由が必ずしも当時はっきりしなかったし、現在もはっきりしていない。(遅れた理由について)一つは技術的に放射線量が高いとか、暗いとか、いろいろな資材が足りないとかで作業ができなかったことは十分あり得る。もう一つは、当時東電の最高責任者の2人が、事故が発生した11日の段階で本店におらず、そういうことが影響したのかもしれない」
筆者が着目したのは、最後の部分だ。菅前首相が名指しをした最高責任者の2人とは、勝俣恒久会長と清水正孝社長(当時)のことである。
勝俣会長は、大震災が起きた当時、北京にいた。マスコミOBからなる視察団を率いる団長として、だ。地震発生の第一報は、本社からの連絡ではなかった。持参した携帯電話が通じず、同行したマスコミOBのiPadで初めて知らされた。緊急事態を知らされても、初動で会社に適切な指示を出せなかったのだ。
週刊アエラ5月2・9日号は、「東京電力を潰す男、『カミソリ』と呼ばれた東電会長・勝俣恒久」という記事の中で、「勝俣と皷は携帯電話で連絡を試みたが通じない」と書いている。ところが東電広報は、4月1日付け読売新聞朝刊に「携帯電話などで連絡をとりあっていたので、指揮系統に問題はなかった」と弁明しているが、時系列からすれば、後で書いてきた週刊アエラの記述が正しいように思える。
一方、清水前社長は、奈良にいた。奥さんと観光中だったのだ。奈良から本社に戻ることができたのは、翌朝10時のことだった。その間、東電はトップ不在で地震と事故対策をやっていたのだ。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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