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自分の経営を客観的に診断する

熊本県における農業経営者の成功事例より

中原さんは1957年に天草農業高校大矢野分校を卒業後、すぐに酪農を始めた。その後、84年の日米農産物交渉の政治決着(牛肉・オレンジの輸入枠拡大)を見た中原さんは自由化の波の到来を予見し、88年より乳牛に黒毛和種二卵移植することを考えた。発想の元となったのは次の考えだった。
800日から300日に育成期間を短縮(酪農)

中原薫さんの場合 熊本県大矢野町

 中原さんは1957年に天草農業高校大矢野分校を卒業後、すぐに酪農を始めた。その後、84年の日米農産物交渉の政治決着(牛肉・オレンジの輸入枠拡大)を見た中原さんは自由化の波の到来を予見し、88年より乳牛に黒毛和種二卵移植することを考えた。発想の元となったのは次の考えだった。 

 「肉の値段は下がり、子牛の値段も下がる。牛乳の値段も下がる。何もかも下がるから母牛から搾る牛乳の値段に加えて、黒毛和種牛は生まれて10ヵ月で約30万円の価格で出荷できる。2頭なので約 60万円の収益が稼げ、酪農家の経営安定につながるはずだ。こうすることで91年4月からの牛肉の自由化、輸入枠撤廃に対応できるのではないか」

 こうして中原さんは88年12月から、国と県の補助を受けた肉用牛新生産技術開発事業を開始し、4年後の92年には乳牛54頭、黒和牛39頭の合計93頭をかかえるほど成功している。この秘訣を探ってみよう。

 中原方式の成功のポイントは牛の育成サイクルを短縮化することにある。まず乳牛の生産について考えると、乳牛の子牛が生まれてから、牛乳を生産するまで 17ヵ月で種付けして、それから10ヵ月で分娩するので約27ヵ月(810日)を要する。だがバイオ技術を導入し、授精卵移植で乳牛の“おなかを借りて”黒毛和牛を生ませると、生後9ヵ月で販売できる。この販売価格は約40万円なので、代金で 28万円程度のホルスタイン初妊牛のすぐ分娩できる牛を購入してくる。したがってその間の日数を考慮に入れると、約10ヵ月になる。こうした手法で育成期間を大幅に短縮することができるのだ(800日から300日への短縮)。

 次に肉の値段について考えてみよう。輸入自由化が肉の値段を下げていくのは予想できた。中原さんは、肉の値段が下がらずに通していけるものは黒和牛だと月をつけ、ここにバイオ技術を導入、2頭を生むことによって従来よりも高く販売ができ、かつ量も増やすことができると思案した。

 1992年現在の実績では2頭出産の確率は40%位だが、将来の技術の向上を見込めば70%位まではいくことを中原さんは確信している。一般の方式と比べて中原方式はサイクルが早いから計算上、3年目には大きな差がつく(図表1参照)。

 以上を要約すれば、授精卵移植技術面の対応と、独特な黒毛和種の生産・販売に対するノウハウがあるかどうかが成功への鍵だといえる。


論理的に分析してコスト低減(養鶏)
那須修一さんの場合 熊本県松橋町


 養鶏の成功事例を紹介する前に、養鶏業界の状況を概略説明しておこう。まず、消費者物価指数に見る鶏卵価格は10年前より下落している。鶏卵・鶏肉の総需要量は今後増えていくことが予想されるが、育成のための飼料代は値上がりを続けている。経営を成功させるには、より知恵を使わなければならない。

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