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イベントレポート

日本植物細胞分子生物学会主催シンポジウム 採録 遺伝子組換え作物の実用化―植物バイオテクノロジーのインパクト

9月9日、大阪・豊中市において市民公開シンポジウム「遺伝子組換え作物の実用化―植物バイオテクノロジーのインパクト―」(日本植物細胞分子生物学会主催)が開催された。今号および次号において、同シンポジウムの講演内容を採録掲載する。本稿では、12月1日より輸入解禁となる予定の、遺伝子組換えパパイア開発者の一人であるデニス・ゴンザルベス氏の講演をお送りする。(取材・文/荒舩良孝)

■講演 ハワイのウイルス耐性パパイヤ物語(デニス・ゴンザルベス 米国農務省太平洋農業研究センター長)

パパイア農家を悩ませてきたウイルス

 ハワイにおける遺伝子組換えパパイアの開発は、利益追求よりも、人々の幸せに貢献するという観点から取り組まれてきました。パパイアはとても美しい果物ですが、パパイア・リング・スポット・ウイルス(PRSV)というウイルスによって大きな被害を受けています。ハワイでは1945年以来、60年以上もの間、このウイルスに悩まされてきました。特にオアフ島のパパイア農家に大きなダメージを与えてきたのです。

 パパイア産業は、78年に生産拠点をハワイ島のプナ地区に移し、そこで栽培をするようになりました。しかし、同じ78年にプナ地区から30km離れた地点でPRSVが発見されたのです。

 PRSVが遅かれ早かれプナ地区にもやってくるであろうことは容易に想像できました。ウイルスが飛来すれば、プナのパパイアに深刻なダメージを与えることは目に見えていたのです。

 私たちは、実際にウイルスがプナ地区にやってきて、深刻な問題を発生させる前に、対処をしようと考えました。解決にあたったのは私を含めて科学者4人の小さなチームで、資金も限られた中で活動を開始しました。

 この取り組みで大きな転機が訪れたのは80年代半ばです。作物に害を与える病原体ウイルスの遺伝子を取り出して、その遺伝子を組み込めば、ウイルスに耐性のある作物をつくることができるという、病原由来の抵抗性というコンセプトが生まれたのです。そして、86年にはこのコンセプトに基づいて、ウイルスのコートプロテイン(殻タンパク質)を組み込んだウイルス耐性タバコが開発されました。


遺伝子組換えパパイア導入がもたらした効果

 私たちも、この技術をもとに、PRSVに耐性のあるパパイアを開発することにしました。そして、91年にPRSVのコートプロテインを組み込んだパパイアを温室で栽培することに成功しました。このパパイアは赤い果肉の「サンアップ」という品種です。これは「サンセット」という品種にPRSV遺伝子を導入したもので、ウイルス耐性をもちながら順調に育ってくれました。その後、この「サンセット」と高級品種の「カポーホ」をかけ合わせて黄色い果肉のウイルス耐性品種「レインボウ」の開発にも成功しています。

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