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新・農業経営者ルポ

私、今は農外所得の方が断然多いですが、それが何か?


 ツムラに限らない話だが、これまで漢方薬原料のほとんどは中国からの輸入に頼ってきた。今後最悪の場合にはレアアース同様に日本国内に入ってこない可能性も考えられ、当然、漢方薬メーカーは国内産地からの調達量を増やしていかなければならない。事実、ツムラは和歌山以外にも高知県越知町に契約農場を構えている。

 「米国進出を考えた場合に、JGAPはもちろん、グローバルGAP、さらに米食品医薬品局(FDA)の基準をクリアするぐらい生産工程が明確なものでなければ漢方薬原料には使ってもらえませんよね。そこで私の出番なんです。JGAPやISOの知識を生かすことができます。そうすることで、和歌山の有田は、世界でトップのサンショウ産地になれるんです」

 服部がこの10年間取得してきた様々な資格は単に食い扶持を維持するためのものではなかった。すべては彼の夢の実現と、地域の将来像を築くことに繋がるものだったのだ。

清水地区だけで50haというサンショウの圃場は点在化しており、集約して経営するのは非現実的だ。そのため、服部自身はこれまでの活動同様、「地域の零細農家を引っ張り上げたい」と考えている。当然JAありだと一緒に取り組んでいくべきと考えており、その関係も良好だ。
 「サンショウ農家さん向けに生産工程管理のシステムを作っていくのがこれからの仕事。簡素化され、しかもこの地域の風土を反映したシステムを、ね」

 山林地主の子孫ゆえに地域の未来を見据え、果たさなければいけない役割に気付いた服部。「やせ我慢、大変ッすわ」と多少自嘲的に言いながらも、「少子高齢化」「限界集落」といった、現代の農村をイメージする時につい思いがちな負の要素を笑い飛ばしているかのようにも感じられたのだった。(本文中敬称略)

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