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新・農業経営者ルポ

農業経営者は誰から学び何に励まされるのか?


 「もう一度あのシャキシャキした新鮮な包丁の感覚を味わいたい!もっと数を集めますからお願いします!」

 若谷農園の小松菜は、各学校の調理師や栄養士たちの口コミで評判になっていった。そこまで言われればやるしかない。一度は途絶えた学校給食向けの出荷を再開し、今では80校にまで広げ総合学習の講師も務めるようになった。こうした地域貢献の姿勢などが評価されて、06年には埼玉県や大日本農会から相次いで表彰された。社会的に認知度が高まるに連れて売上も増え続け、とうとう今年は1億円に達成した。


紳士・淑女たちが成長させる中小企業を目指して

 これまで、素晴らしい従業員たちとの出逢いに恵まれ、苦労らしい苦労はしてこなかったと穏やかに語る若谷だが、残念に思うこともある。地元農業の振興や若手人材の育成にもっと力を入れていこうとするが、この地でもご多分に漏れず、古い農業界の体質に無力感を感じる時があるのだ。

 「新規就農したいと準備をする若者がいても、簡単には良い土地は貸してもらえません。また、地元の古い農家が自分の住居敷地からちょっとはみ出す形で自分の耕作地に農機具置き場をつくった途端にこれは農地法違反だと大騒ぎになってしまうこともあります」

そんな時、励みになるのは、やはり一緒に働いてくれる従業員たちとつくる会社の未来である。
 真夏の太陽の下で大粒の汗を流し、真冬の凍りつくような水に浸かりながら作業を続けてきた紳士・淑女たちは、現代日本の労働市場におけるトップランナーなのである。(本文中敬称略)

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