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編集長インタビュー

「日本農業の底力」はノウハウの“融合産業化”で必ず開花する

長年、食・農・むらから地域経済の活性化と日本社会を展望する評論、農政への提言活動を行なってきた大泉一貫氏。このほど新著『日本農業の底力 TPPと震災を乗り越える!』を上梓した。“市場忌避”的な思考からでは日本農業は成長しない、が持論だ。震災復興期の今こそ、“市場拡大”志向が未来の展望を生み、オランダなどの成熟国型農業から日本は学ぶ必要がある、と説く。3回目を迎える農業ビジネスコンテスト「A―1グランプリ2012」(弊社主催)の審査委員長も務める。

世界市場がジャポニカ米を中心に形成される

昆吉則(本誌編集長) 実はさきほど、「西友が中国米を売ったので、コメントをもらえないか」と経済誌の記者が取材に来たんですよ。だけど私から言わせれば、そんなのは今に始まったことではないし、メディアが騒ぎ立てるような話でもない。流通するのも少量で、日本のマーケットが満足するだけの量を安定的に安い値段で調達できることはあり得ませんから。まさに大泉さんの新著「日本農業の底力」を過小評価してるんじゃないか、と感じたのですが、大泉さんはどう評価します?

大泉一貫(宮城大学教授 事業構想学部長、副学長) 自由に売ればいいんじゃないでしょうか。商売の自由を規制することの方がよっぽど問題です。しかし中国米を販売したぐらいでニュースになるのは、「市場を狭くして今のままでいたい」という日本農業の発想を図らずも体現していますね。本来、コメの世界でもっとも大事なのは生産調整することではなくて市場拡大なんです。というのも市場がなくなることが、農業にとって一番恐ろしいことですから。その戦略を考えなければいけないのにかかわらず、日本農業はその逆を行なっているため、将来の展望がなかなか見えてこない。

昆 そうなったのはなぜですかね。

大泉 農協や農水省などの団体が、「市場忌避」的な思想を持っていたからでしょう。1880年頃、私は自分でコメを販売する農家や直売所を支援していたら、農協に反対されました。理由を聞いたところ、「自分たちの計画経済や計画率を脅かすからだ」という。

昆 計画経済は欠乏の世界では有効だとしても、過剰のマーケットでは絶対に通用しないんですけどね。

大泉 それから食管法から食糧法に移行した85年、今度はインターネット通販のシステムを作って農家の個人販売を支援しようとした時は、「あいつは学者なのに、なにバカなことをしてるんだ」と批判されました。市場に「NO」を突きつけて、顧客に対しても謙虚ではない農協が、農家や農業ビジネスを守ってきたならいいんですけど、守ってきたのは自分達なんですよ。結果、「自分達は負け犬であって、常に保護されるべき」という体制を作りあげたため、輸出も海外の市場も意識しないような農業になってしまいました。

昆 実際のところ、日本のコメは海外で戦える実力を持っているわけですよね。

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