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【土門「辛」聞】
税金も払わぬ集落営農組織に補助金を出すな
- 土門剛
- 第91回 2012年03月29日
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前月号のお詫びから話を始めてみたい。岩手県農業会議の「集落営農組織の運営等に関するアンケート調査結果概要報告書」について、収支状況の説明について、筆者の記述に一部間違いがあった。
記事では、「損益状況についての記載がない」と指摘したが、その報告書をよく読むと、その記載は前頁にある。「問5 組織の収益について」なる項目がそれで、前月号記事の記載通りの「収入が上回った」165組織(46%)、「収支トントン」157組織(44%)、「支出が上回った」37組織(10%)の記述だ。
県農業会議に「損益状況についての記載がないのは、どうして」と疑問をぶつけところ、担当者は「県との協議会でそうなった」と説明してきたのを損益状況についても県との協議で記載しなかったものと取り違えた。報告書を精査しておれば、こんな間違いは起きなかった。その部分だけを訂正しておきたい。
ヒントをくれた課長答弁
損益状況についての協議ではないとしたら、何を記載しないことを決めたのか。その疑念はつきまとった。
その報告書に何回も目を通していると、彼らが協議した内容が、何となく思い浮かんできた。「支出が上回った」赤字の組織を少なく見せるため、県担い手担当課が「収支トントン」の項目に入れてしまうよう指示したという疑いである。もしこれが事実としたら、世間では、これを偽装工作と呼ぶ。
県担い手担当課の千田牧夫課長に質問をぶつけてみようと思ったが、諦めた。彼の取材を受ける態度から、いくら質問しても無駄だと判断した。「集落営農組織には、多額の税金が投入されている。納税者の1人としてチェックしたい」と説明したところ、「岩手県民税を払っているのか」と逆襲されてしまった。岩手県の自主財源が4割を切り、残りを地方交付税や国庫支出金などに依存していることを承知の上での発言なのだろうか。挙げ句の果てに、「そんなに話を聞きたければ、電話ではなく盛岡までやってきたらどうか」と筆者を挑発してきた。これには「すぐ、行く」と即答してやった。
千田課長に挑発されたわけでもないが、今月号は、農協組織と結託して推進してきた岩手県の集落営農組織の多くが、払うべき税金を払っていない実態を暴いてみたい。
手がかりは、やはり千田課長のコメントだ。先月号でも紹介したが、決算書をベースにした調査資料の存否を筆者からたずねられた際の、この答えである。
「そういう決算書を参考にした調査までしておりません。いくつか現場から聞こえてくる部分では、赤字の組織もあるのだと思っていますが、それを数字として把握するのは、私たちの仕事ではないと思います」
後段の発言部分は、「語るに落ちたな」と思った。取材で岩手県庁へ出かける前に、県が2004年に作成した「集落営農組織育成マニュアル」に目を通していた。千田課長が説明を終えた直後に、そのコピーを目の前に示し、「ここには、決算書の作成が必要である旨の記述が数カ所ある。そのような記述があるのなら、当然、各集落営農組織の決算書の概要についてあなたは把握しておくべきだよね」と追及すると、千田課長は思いもよらぬことを言い出してきた。
「(マニュアルが作成された)その時は、残念ながら、今の部署(担い手対策課)にはいなかったので、承知していない」
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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