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女化通信

季節で違う手間仕事の経営的意味

  • 『農業経営者』編集長 農業技術通信社 代表取締役社長 昆吉則
  • 第2回 1995年10月01日

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昭和5年生まれの高松求氏は、茨城県牛久市女化町という畑地帯に住む複合経営農家である。ご自分ではすでに引退した経営者だという同氏だが、その経営体験から生まれるさまざまなアイデアや経営への考え方は、その規模や作目を問わず示唆に富む。「女化通信」のタイトルで同氏のその時々の仕事と、本誌とも共同で進める経営実験の模様を紹介していきたい。
収穫委託で約10万円/10aの利益


 収穫作業を外部依託した高松さんの加工用バレイショ栽培について前号で報告したが、その経営収支を高松さんからいただいたので紹介する(1表)。

 圃場での目算では収量3t弱と見ていたが、依託業者からの計量報告では10a当たり2・79t(規格内品2・59t)。残念ながら収量的には最初の目論見をさらに下回ってしまった。それでも作業委託料金と種イモ代を差し引いた収支結果は約79万円。畑の面積は、畑中央に作った2m幅の作業道や大きく日陰になる部分があることを考えれば実質80a。だとすれば、10a当たりでは9万8755円、約10万円の収益である。

 農薬、肥料代は勘定に入れてないが、畑作としては上の部類に入る収益だと思う。しかも、肝心なのは投入労力も資材費の点でも負担が小さいこと。特にバレイショ栽培で最も作業負担の大きい収穫・出荷労力を外部に依託しての話なのだ。

 収穫作業料金は面積当たりではなく、規格内品であるL・M玉の収穫量で計算し、1kg当たりの作業単価は8円。今回の高松さんの場合では、L・M玉の収穫量が合計20・74tだから16万5920 円の請負料金を払った。その上での前述の収益なのだ。前号でも書いた通り反省点も多かった。でも、まずは論より証拠の成果だったとはいえないだろうか。

 今回のバレイショ作りは、小規模農家や高齢者でも重労働の収穫作業を外部に依託することで、いかに利益を上げることができるかの経営実験だった。そして、畑作でありながらついつい単位面積当たりの収益を考えてしまう園芸的発想から自由になることの必要性、言い換えれば、小規模農家でも「投入労働力当たりの収益」を考えた、利益の上がる畑作経営が可能であることを示してみたかったからだ。さらに、府県での今後の畑作野菜経営を発展させるためには、作業受依託がどうしても必要であり、また作業の依託側と受託者側の双方の協力関係を作り上げていく必要のあることを示したかったからだ。

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