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【岡本信一の科学する農業】
最大の問題点は基肥中心の施肥過剰
- (有)アグゼス 代表取締役社長 岡本信一
- 第7回 2012年05月18日
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多くの方が天候の影響には目をつぶっていて、天候の影響を回避することは不可能だと考えています。実際には天候の影響を最小限に抑えることができ、それもお金や手間をかけずに回避することすら可能です。
植物の生理からみると追肥型の方が理に敵う
長年、栽培の現場でコンサルタントをしてきましたが、日本での栽培の最大の問題点は、施肥過剰に陥っていることです。この施肥過剰によって、作物栽培への天候の影響が増幅されているのです。
日本の気候の特徴は、雨が多いところにあります。農業を行なうには、暑すぎず、寒すぎず、最も恵まれた条件であると思います。この雨が多いという条件が施肥過剰に陥る最大の原因といってよいでしょう。雨が多いということは、肥料の流乏が激しくなり、基肥として与える施肥量は多くなりがちです。
植物の生理から見ると、播種直後というのは作物体自体が小さいために多くの養分を必要とせず、体が大きくなるに従って必要とする養分量も増えます。雨が多く、肥料流乏覆い日本では、体が大きくなった時期に十分な養分量を確保するためには、途中で流乏する分も含めて基肥として与えておかなければなりません。これが過剰な施肥になる原因です。
雨で流乏する分も基肥として与えるわけですから、播種直後はむしろ土壌養分は過剰になります。土壌養分が過剰な状態で、作物の根は張るでしょうか? 生育初期は、養分がない方が作物は根を張るだろうと考えるのが自然でしょう。
また、野菜などのマルチ栽培では、追肥が行ないにくいという理由で基肥の量を多めに与える傾向があります。よく考えてみていただきたいのですが、マルチには肥料の流乏を防ぐという効果があるのです。ところがマルチ無しに比べて、マルチ栽培では施肥量を多く与えてしまうのが実状ようです。
雨の多い条件下では、追肥で施肥を行なう方が理に適っていますが、基肥で肥料を与えるということにこだわりすぎているように思います。 基肥で肥料を与えるのは、施肥の方法の一つに過ぎず、肥料流乏の激しい日本では、効率が悪いのです。基肥で施肥を行なう利点は、作業が楽であるという一点です。作物の生理から見ると全く理に適っていません。この基肥中心の施肥が日本の栽培技術を停滞させている理由の一つだと思います。
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岡本信一 オカモトシンイチ
(有)アグゼス
代表取締役社長
1961年生まれ。日本大学文理学部心理学科卒業後、埼玉県、 北海道の農家にて農業研修。派米農業研修生として2年間アメ リカにて農業研修。種苗メーカー勤務後、1995年 農業コンサ ルタントとして独立。 1998年(有)アグセス設立代表取締役。農業 法人、農業関連メーカー、農産物流通企業、商社などの農業生 産のコンサルタントを国内外で行っている。講習会、研修会、現地 生産指導などは多数。無駄を省いたコスト削減を行ないつつ、効率の良い農業生産を目指している。 Blog:「あなたも農業コンサルタントになれる」 http://ameblo.jp/nougyoukonnsaru/
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