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新・農業経営者ルポ

「食は、官能なり」。本能に忠実な創造主



茨城の農業法人に身体ひとつで飛び込む

 2000年3月、唐澤は新規就農フェアに参加した際にもらった企業案内を手にした際に気になっていた(有)農業生産法人茨城白菜栽培組合(茨城県古河市・岩瀬一雄社長)に問い合わせを行ない、正社員として採用され、同年4月に入社した。

 「インターネット黎明期ですから、ホームページを作っている農業法人はほとんどありませんでした。でも、茨城白菜栽培組合はきちんとホームページのアドレスを掲載していて『へぇ、こんなところもあるんだ』と驚いたんです。先見性や広告宣伝にコストをかけられるところであれば、学ぶことも多いと思って入社しました」

 実際、唐澤は多くを学んだという。入社間もなく研修で行った山梨県の農場では、現場における作業の過酷さ、顧客が求める品質や労働環境と作業員のモチベーションの関係など、学ぶのに無駄なことはひとつもなかった。秋には茨城に戻り、ありとあらゆる業務に従事した。茨城だけでなく、埼玉、長野、山梨など近県で150前後の契約農家を束ね、主に漬物メーカーに対して周年でハクサイを卸している同社で、唐澤に与えられた役回りは、ハクサイの作付から収穫、さらに流通におけるスケジューリングや出荷量の調整を行なうものだった。天候をはじめとする様々なリスクがある中で日々決断を迫られる業務は、「これができるようになれば、農業だけでなく、どこの業界でも通用する人材になれる」と岩瀬社長がお墨付きを与えるぐらい厳しかったが、ひ弱な青年・唐澤を鍛えるには十分だった。

 入社から2年、3年経った唐澤は、自分自身で新たな仕事を作っていった。業務用ハクサイを卸していた同社だったが、彼は営業マンを勝手に買って出て、成城石井といった高級スーパーにも卸していくようになった。同社が商品開発した「霜降り白菜」は引く手あまたの人気となった。さらにハクサイだけでは物足りなかったのだろう、キャベツ、ダイコン、ホウレンソウ、ネギなど多品目を取り扱うようになっていった。

 「こだわったのが、とにかく『食べて美味しい』品種ということでした。種の売れ筋って、農家が作りやすい、形が揃いやすい、病虫害に強い、歩留まりがいいといったことが最優先事項で、次に味というものがほとんどですよね。でも、私は食べて明らかに美味しい品種を契約農家さんに育ててもらい、スーパーに提案していました。実際、お店も美味しい野菜を売りたいと考えていました。そうやって出会いとタイミングがうまくいって、取引先がどんどん増えていきましたね」

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