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海外レポート

Agritec2012&イスラエル農業訪問記 第3回 現場と科学を融合していく農業事業

本誌恒例のイスラエル“ハイテク農業”視察ツアー。3年に一度の国際農業展Agritechに併せ主催している。その模様を視察参加者から寄せられた紀行文と写真で綴るリレー連載!

驚愕のイスラエル農業

 矢崎グループは、自動車用部品をはじめ、電線、ガス機器、空調機器等を開発・製造・販売、日本を含む世界40カ国に進出し、海外では主に自動車用組電線(ワイヤーハーネス)を生産している。

 自動車用部品の競争力確保のため、日本国内の生産は海外にシフトされ、生産子会社の雇用確保は大きな課題となっている。矢崎グループでは雇用の維持・創出と地域貢献を強く意識し、新規事業にも積極的に取り組んでおり、農業事業もその一つだ。

 私は入社以来15年、技術研究所勤務(金属の腐食の研究やセンサの開発)であったが、新規事業の一貫として2年前の2010年に経営企画室にできたアグリチームへ異動し、現在、主に農業に関する技術全般を担当している。

 とはいえ、まだまだ経験が浅く、他の農業法人や企業から技術や経営手法を吸収している最中である。

 そんな中、イスラエルではハイテクでユニーク、高収益の農業が行われていると聞いた。世界各国の気候の違いに対応できる、最新技術や経営手法のヒントがイスラエルで見つかるのではないかという期待から、今回の視察ツアーに参加した。

 期待していた通り、イスラエルでは多くのユニークで効果的な農業技術を見ることができたが、一番印象に残ったのは、年間降水量40mmという厳しい環境でも、「なんてことはない。」「ここはもっとも農業に適した場所だ!」というおじさんだ。訪問記第1回目で掲載された中山さんの記事(2012年7月号)にもあった通り、砂漠であれだけ高品質のトマトを10aあたり20tも作ってしまう。また、そのおじさんは、土壌の微生物性は気にしたことがない。20年同じものを同じ場所で連作しているが、土壌消毒なんてしたことはないし、連作障害も起こっていないと言う。そんな話を聞くにつれ、たしかにイスラエルの砂漠は農業に適しているといえるのかもしれないな、と思うようになった。


現場目線と科学の両輪

 イスラエルの農場に行くと、自動化のための計測機器が目につく。この計測機器で、気温や水の蒸散量、降水量を計測、植物生理に基づいた灌水や施肥をセミオートマでやっているそうだ。イスラエルの環境は降水が少なく高温で厳しい。しかし、よくよく考えてみると、少雨、高温(夜間は冷え込むが)、低湿度で条件は安定している。日本のように雨が続いたかと思うと晴天が続いたり、最高気温が上下したりと大きな変化は少ない。とすれば、プログラムによって自動化しやすそうだ。展示会で見たイスラエルのセンサーは、非常にシンプルで壊れにくそうだ。以前、研究所でセンサーの開発に携わったこともあるので、その辺の勘は良いつもりである。これで十分な機能を発揮するのであれば、価格もそれほど高くはないので、すぐにでも使いたくなる。イスラエル製のセンサー等の機器は、現場目線で作られた、実用的で洗練された、素晴らしい製品だと感じた。

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