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“被曝農業時代”を生きぬく

苦難を乗り越え、前進するなかで気づいた地元顧客の支えとツイッターを通じた応援のありがたさ

本誌昨年10月号で風評被害に向き合う農業経営者たちの姿を紹介した。彼らは、放射能汚染に不安をいだく顧客に対して説明責任を果たそうと努力していた。あれから1年近くたつ。その努力に報いる成果はあったのだろうか。そして、現在の状況は? 今回は、福島県新地町でバンビリンゴ七印園芸を経営する畠米七氏にお話をうかがった。畠氏の経営するリンゴ園は、宮城県との県境、仙台湾を望む高地にある。約3.5haの土地に20種類以上のリンゴを栽培し、直売所で販売するほか、全国に注文販売をしている。原発事故後、畠氏は、日本GAP協会の放射能検査プログラムにより作物の検査を繰り返し行うとともに、その結果や福島県の農家の状況をブログやツイッターを使って消費者に報告してきた。

売れ残りは廃棄に

 昨年の売上は例年の7割でした。仲間には売上がゼロに近い人もいましたから、恵まれていました。インターネットで情報を発信したり、毎年注文してくれる顧客に案内書を送ったりしたおかげだと思います。地元の新聞に紹介され、直売所の売上が増えた日もありました。仮設住宅にリンゴを売りにもいきましたよ。でも、首都圏からの注文はずいぶん減りました。

 今までは秋にすべてのリンゴを売り切っていたので、リンゴを貯蔵する施設を持っていません。どんどん風味が落ちていくリンゴをお客さんに売るわけにはいきませんし、リンゴを処分をしないと東電からの補償が受けられません。そこで、売れ残ったリンゴを廃棄することにしました。11月の終わりから軟らかくなったリンゴを品種ごとに畑に運び、草刈り機を使って、こなごなに粉砕しました。主力商品である「フジ」は、3、4か所にも分けて、つぶしました。皮肉なことに、今年は収穫量も多く、味もよかった。そのため、一層つらかったです。


東電に損害賠償を請求

 でも、くよくよしてもいられません。1日でも早く、損害賠償金をもらわないと資金繰りができなくなります。正月明けから、東電への損害賠償金請求の準備を始めました。状況を説明する書類や決算書など必要な書類をそろえました。確定申告の申請期間が始まるかはじまらないかのうちに税務署に出かけて、書類に印鑑ももらいました。売れ残ったリンゴを入れたコンテナや廃棄する風景などの写真も書類につけました。2月の上旬には東電に申請書類を提出し、中旬には受理されました。

 損害賠償の申請は個人より団体で行うほうがスムーズかと思い、JAを通じて行なおうとしました。でも、もともとJAとは、肥料を買うぐらいしか付き合いがなかったので、農民連(農民運動全国連合会)を通じて行なうことにしました。地主さんがそこに加入していて、私に紹介してくれたからです。農民連のバックアップは心強かったです。農民連による東電との個別相談会では、事前に東電担当者に申請書類を確認してもらうこともできました。

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