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人生・農業リセット再出発

『飛べ!ダコタ』

「敵の飛行機が浜に不時着したぞ! ねしょろも(女たち)は引っ込んろれ! アメリカに殺されるぞ!」ズドーン、ザザーッ! 地響きを立てて、とんでもない物体が天から落ちてきたようなごう音が静寂を突き破る。
 日が暮れそうになる真冬の夕刻4時を回ったころ、鉛色の空に身を切る寒風と白い波頭を立てる日本海の浜辺を、爆音とともに低空飛行をしながら見たこともない大きな双発プロペラ機が何度も旋回していた。ただ、よく見ると、空襲の攻撃態勢とはほど遠い飛び方をしており、車輪を出して不時着する場所を探している気配だった。片翼のプロペラは止まっている。その直後の地響きだった。原爆を落とされて終戦を迎えてからまだ5カ月。戦死や未帰還兵を持つ家もあり、「鬼畜米英!」と竹やりの訓練が続いている集落もあった。そんな状況下の昭和21年1月14日月曜日、民話「鶴の恩返し・夕鶴」の発祥地である佐渡島北部の貧しい寒村、高千村は海府海岸で天変地異の大事件が起きた。

  砂浜に不時着した飛行機は奇跡的にほぼ無傷だった。目と鼻の先にある役場で執務中の村長や職員は、衝撃に驚いて立ち上がり、一斉に飛び出す。村人たちも駆けつけた。そして、まだ砂煙が舞うなか、飛行機のドアが開く。初めて目の当たりにした異国人、腰に拳銃を着けた背の高い軍人たちが姿を現した瞬間、村人たちは「殺されるぞ!」と叫んで逃げ出した。

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