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女の視点で見る農業経営

農業・農村の素晴らしさを娘や息子、そして多くの人に伝えたい

宮城県の水稲と肉用和牛育成の農家で生まれた聖子さんは、両親の、特に母親を見つめながら育った。生き生きと働く母親の姿に誇りを持ち、母と同じような喜び、感動を味わいたい、感じ取りたいと願い、高校卒業後、北海道の酪農実習を体験。
 宮城県の水稲と肉用和牛育成の農家で生まれた聖子さんは、両親の、特に母親を見つめながら育った。生き生きと働く母親の姿に誇りを持ち、母と同じような喜び、感動を味わいたい、感じ取りたいと願い、高校卒業後、北海道の酪農実習を体験。さらに酪農学園短期大学へ進み、十勝東部地区農業改良普及所で生活改良普及員となって4年、畑作専業農家を営んでいた勝則氏と出会い結婚した。農家の嫁として、妻として、そして4児の母としての毎日を送る聖子さんは、農業・農村が直面している問題の解決への努力を模索し、その中で女性たちの努力と自覚を促す活動を自らがリーダーシップを取り、日夜奮闘している。まさに「奮闘記」というに相応しい聖子さんにお話しを聞いた。「私がそうであったように、子供たちは、両親の、特に母親の生き様を通して、農業、農村を見つめているのではないでしょうか。そして、結婚して初めて、常に前向きに生きてきた母の姿勢は、父の支えによるものであることに気づかされました」と語る聖子さんは、より良い農業・農村づくりのために大切なのは、男性と女性が、夫と妻が、お互いの人格を認め合い、良いところを出し合って築いていくことではないかともいう。


『おびひろ農業塾』での学びを通して


 帯広市では、「たくましい農業・うるおいのある農村づくり」を進める上で、最も大切な「人づくり」を目的とした『おびひろ農業塾』を平成元年より開設した。若手農業後継者を中心に約20名が集まり、それぞれがテーマを出し合って塾生としての2年間のプログラムを組み立てる。テーマに基づいた講師を各方面から招聘して開く『定塾』を中心に、道内、道外へも研修に足を運ぶ移動塾、多くの仲間に呼びかけ学び合う公開フォーラム等が主なプログラムである。この塾の1期生として学んだ聖子さんのご主人・勝則氏は、夜中に帰宅すると充実した学びを聖子さんに報告。「話しが難しかったり、あまり興味のない話しは子守り唄になったこともありましたが、興味のある話しには目も冴え、会話が弾んでつい夜更かししてしまったりしたこともありました。でもそんな夫に育てられたのでしょうか。私の中で、今度は自分も学んでみたいという思いが生まれたのです」。さっそく二期生として入塾した聖子さんは「農業、農村は無限の可能性を秘めた素晴らしいフィールドであること。また、それを実現するためには、私たち農業者自らの努力と新しい知恵と勇気が必要だということを学ぶことができました。でも本当に周囲の人々の理解と協力がなければ続けられなかったと思います。というのも塾生として学んでいた2年の間に4男の妊娠―出産をし、さらに泊まりがけの移動塾にも参加したのですから。道内移動塾に行った時など、母もヨーロッパ旅行に出かけており、家は夫と父と当時は3人の子供たちだけ。そのことを研修先で話すと皆一様に驚くんです。それだけでなく、留守中に訪れた農機具メーカーの人が、男だけで家を守っている状況にびっくりし、会社でも話題になったと聞きました。その時、私自身の恵まれた環境に感謝すると同時に、男性が泊まり掛けで出かけ、女性が家を守っていることなど話題にもならないのに、逆の状況は大きな話題となることを実感し、女性が積極的に学ばうとする時には大きな制約があることを知らされました」と語る。 


農業簿記を学んで積極的に経営参加


 平成3年、農業改良普及センターのある農村婦人活動促進事業の一環として、若妻13名が集まり”ポロシリパワフル” という農業簿記学習グループが結成された。簿記という手段を通じて、妻たちも農業経営者のパートナーとしての自覚と意識改革を行なうというもの。具体的には、作業日誌の記帳と経営分析を行なうこと。「一口に簿記記帳といっても家事・育児・農作業を終えた後、疲れた身体でペンを持つのはなかなか大変。一人では投げ出したくなる記帳も、仲間に励まされつつ頑張っている毎日です。昨年からはパソコンも導入して経営の改善に取り組んでいるんですよ」。

 女性が経営に参画しようとするには、男性ばかりではなく同性からも厳しい視線を向けられる。しかし「後に続く女性たちのためにも、”働く女性”から”経営に参画するパートナー”となるために仲間だちとの活動を続けていきたい」と語る。ポロシリパワフルでは簿記の先進地視察研修に出かけたりするほか、パンジーの播種・育苗をして環境美化活動に努めるなど、楽しくうるおいのある暮らしを目指している。”あわてず、あせらず、あきらめず”を合言葉に、農業経営者のよきパートナーとなるべく活動を続ける仲間たちだ。

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