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レポート

業界を変える種子繁殖型イチゴ(前編)

今年に入ってイチゴ業界に大きなニュースが飛び込んできた。産学官連携の研究チームが国内で初めて、四季成りでF1品種の候補となるイチゴの開発に成功したというのだ。実用化されれば、育苗の手間が省けるだけではない。従来の栄養繁殖型では難しい11月からの出荷、有機栽培にも道を拓くことになる。こうした可能性を来年度から追求し、育成者権を活かした新たなブランドづくりに着手するという。一体どんな構想を描いているのか。(取材・まとめ/窪田新之助)

カンブリア爆発の礎

 研究グループは1月末、三重県津市で種子イチゴ「系統23」の成果発表会を開いた。テーマは「共同育種による種子繁殖型イチゴ品種の開発と種苗供給体系の改革」。会場に詰め掛けた約150人を前に、事務局を務める三重県農業研究所園芸研究課の森利樹主幹研究員は次のように強調した。

 「これをきっかけに種子イチゴの品種開発が加速し、10年から15年後にカンブリア爆発が起きる。その頃を起点に、品種は従来の栄養繁殖型から種子繁殖型に段々と置き換わっていくだろう」。この大胆な発言は、今回の研究成果とそれに対する期待の大きさを物語る。

 現在、国内で流通する種子イチゴの品種は数種類しかない。このうちシンジェンタジャパンが扱うのは四季成りの「エラン」。これは主にケーキなど業務用向け。酸味が強いため、パック売りは少ない。

 ほかに国内初となった種子イチゴとして、千葉県が2011年に品種を登録した「千葉F―1号」がある。しかし、これは一季成り。おまけに門外不出で、現状では実質的に商業栽培ができない。

 だから全国の農園で作られるパック売りの甘いイチゴは、ほぼすべて栄養繁殖型といって間違いない。ただ、栄養繁殖型ではイチゴ業界が抱える喫緊の課題を克服するのは難しいのだ。


労力とコスト軽減への貢献に期待

 その理由の一つは、栄養繁殖型では親株から子株に病害虫がうつりやすいことがある。このため苗の増殖率は低く、防ぐには農薬を多用しなければならない。

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