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シリーズ TPP特集

本誌1・25TPPセミナーより 暴かれたおばけの正体(下)


 それに、北米自由貿易協定(NAFTA※注)に加盟する米国はメキシコからの不法移民の流入には厳しい態度で臨んでいる。米国自身、テロ対策もあって単純労働者の受け入れには反対しているのだ。

 キヤノングローバル戦略研究所の山下氏は、遺伝子組み換え食品については、いずれの国でも安全を確認した食品以外の流通は認めていない点を強調している。

 それから、米国の食品表示制度が押し付けられるという不安の声もある。米国は表示は不要という制度にしている。一方で日本は、遺伝子組み換えのDNAやたんぱく質が残る豆腐などの製品にだけ、表示を義務付けるという合理的な制度だ。TPPの交渉参加国である豪州やニュージーランドは米国のような表示制度に反対している。日本がこれらの国と協調すれば、日本の制度には合理性もあるので、現在の規制が見直される可能性は低いといえる。(終わり)


編集部注
※ NAFTAは米国、カナダ、メキシコによる自由貿易協定。1992年に署名し、94年に発効した。域内の貿易は拡大している。外務省によると、1993年から2004年までに米国からメキシコへの輸出額は約166%増。一方、メキシコから米国への輸出額は約290%増となった。

解読 TPPおばけが生まれた訳

 事実無根のTPPおばけは、なぜ生まれたのか。その答えは、キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁氏が機会をとらえては語っている、次の一言に尽きる。

 「TPP問題は農協問題」

 2010年10月に民主党の菅首相(当時)が開国宣言をした後、TPPおばけに怯えてきた日本。このことで象徴的な出来事は、JAグループが11年に起こした反対のための署名運動だろう。他の農林水産業やや医師会などと連携し、集めた数は約1167万人。実に国民のおよそ10人に1人が名前を記した計算になる。 

 これだけの数を後ろ盾に、JAグループは反対運動を正当化した。しかし、むしろ圧倒的な数だからこそ、奇異に感じられてしまうというのは常識的な感覚ではないだろうか。そこで、次ぎのような疑問が生まれてくる。果たして、これだけの人々がTPPを正確に理解し、賛否に対する姿勢を明確にしていたのだろうか、と。

 この問いを追求するため、署名活動を巡って起きたことを、筆者が当時、見聞したことから振り返りたい。まず、JAグループの職員は1人当たり100人分といったように、ノルマが課せられていた。JAグループの職員数は22万人(10年)に及ぶ。これだけで相当な署名数になる。

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