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海外レポート

東アフリカ・ケニアの農業ビジネス探訪 農家の課題は経済と健康状況の改善にあり

ケニア、ひいてはアフリカの農業における問題の一つは、農産物の買取価格が低く生産者の自立がむずかしいことである。アジア諸国にくらべると技術レベルや農業機械の普及率も低く、なかなか農家の自立的経営が立ち行かない。農業への融資プログラムもコーヒーや紅茶のような大規模輸出産業者やその契約農家などにかぎられているため、ケニアの生産者の大半を占める小規模農家は融資を受ける道も閉ざされている。専業農家の所得は平均すると兼業農家の3分の1以下であり、農業以外に生業のない地方では、貧困のスパイラルからなかなか脱せない。このため国家の食糧生産を担いながらも、飢えや栄養不足に苦しむ農家も多い。
前回紹介したムボゴは、モリンガをビジネスに結びつける上で、この問題を視野に入れることを考えた。たんなる換金作物生産ではなく、ケニアの農家がかかえる問題をモリンガ栽培を通して解決できないだろうかと思ったのである。その問題とは大きく分けると経済的問題と健康・栄養の問題であるという。

 「コーヒーや紅茶のような換金作物はトウモロコシなどとくらべると収益性が高い。しかしこれらの産物は昔から大きな会社によって統括されていて、小規模農家にとっての収益はけっして高くありません。けれども、大手の参入がないモリンガは小規模農家でも栽培できる上、キロ当たりの価格はトウモロコシの三倍です。もともと自生していたこともあって栽培もむずかしくないので、参入のハードルも低い。その意味で今後大きな可能性があると思っています」

 だが、ムボゴがさらに重要視しているのが、モリンガが農家の健康・衛生に果たす可能性である。国民の50パーセントが貧困層であるケニアでは、農村の栄養状態はけっしてよくない。ケニア全体の乳児死亡率は1000人当たり81人(2008年)と世界でもきわめて高い。ムボゴ自身、ケニア農村の栄養状態がかなり悪いことに気づいていた。

 「アフリカ全体にいえることですが、私たちには食事と健康を結びつける文化が欠落しています。日本や中国では、たとえば緑茶を飲むことが健康や病気の予防につながるという文化がありますよね。でも、ケニアでは食事はおなかを満たすものであって、健康とは別だとほとんどの人が思っている。栄養補助用のサプリメントは売っていますが、値段が高く一般の人たちには買えません」

 ムボゴはケニアの生産者自身がモリンガを食べることによって栄養状態の改善や食生活についての考え方を変えられないだろうかと考えた。国民の食を担う農業において大切なのは生産者自身がまず健康であることではないか、とムボゴは考えた。

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