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【土門「辛」聞】
ネット産直業界の統合再編で出荷生産者の手取りは増えるのか
- 土門剛
- 第104回 2013年04月12日
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正直、このニュースを聞いた時、ちょいと複雑な心境に陥りました。わが思いを代弁してくれたのが、農産物流通コンサルタントの山本謙治さん。その公表があった3月21日、その日のブログ「やまけんの出張食い倒れ日記」に、こんな感想を記しておられました。
「本件は識らなかったので、昨晩はどっかーんとショックを受けた。おいおいなんだそりゃあと。実は僕はローソンは日本の大手コンビニの中で最も好ましくない会社だと思っている。TPP推進派の新浪剛史社長は、あいかわらず農業市場開放派がロジックに使う『日本農業は生産額ベースでは強いから、TPPでも大丈夫』というような初歩的なことを言っている。ナチュラルローソンを展開しながら100円ショップ業態を出したりと節操もない。もっといえば、ローソンは先に、有機宅配業界で大地と勢力を二分するらでぃっしゅぼーやとも提携しているはずだ。大地にまで手を伸ばしやがって、事業の整合性をどうとるつもりなんだろう。と、昨日は大地の関係者に連絡をしてまわった。最悪、いま受けてる仕事は全部キャンセルするかもという打診までした。俺、嫌いな会社と仕事したくないもんね」
坊主にくけりゃ、袈裟まで憎い。そんな思いが伝わってきますね。これには背景があって、やまけんさんは、「僕は大学生の頃から大地を守る会の会長である藤田さんにかわいがってもらい、社会に出てからはさまざまな仕事を通じて支援させていただいてきた。いまも機関誌に連載を書いていたり、直近でもいくつかの案件で関わっているのだが……」(同ブログ)と説明しておられます。
ナチュラルローソンと100円ショップ。この取り合わせだけでなく、有機農産物を扱う会社が、安売りのコンビニの資本を受け入れるということは、他人事ながら、どうしても違和感を禁じ得ません。
余談ですが、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への対応も、天地ほどの差があります。ローソンの新浪社長は、賛成派のオピニオン・リーダーの一人。TPP協定で、日本農業が活性化すると呼びかけておられます。方や大地を守る会は、奇しくもローソンからの出資を受け入れた翌日(3月22日)、「TPPで食の安全は守れるのか? 大地を守る会は、こう考える」と緊急声明を出しておられます。TPP協定で、遺伝子組み換え食品、ポストハーベスト農薬、原産地の表示義務、残留農薬基準、BSE(狂牛病)検査基準などが緩和され、食の安全が脅かされると主張しているのです。
まさに「うなぎと梅干し」や「かき氷と天ぷら」の食い合わせの例のようなものでしょうか。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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