ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

特集

1反歩で喰えない奴は何百町歩やっても喰えないのだ(勝部徳太郎)

いまだに「農業経営者」という雑誌名を聞いて、「あなたの雑誌は規模の大きな人向けの雑誌でしょう?」などと頓珍漢なことを言う人がいる。経営者不在の集落営農が破綻していく。一反歩で喰えない人々を集めても、マイナスの掛け算にしかならないからだ。規模を大きくすることで収益性を高めることができる人もいるが、逆はまた真ならず。問題は、その農場が顧客とするマーケットにいかなる価値を提供できるかにかかっているのだ。

今月号の特集タイトル、「1反歩で喰えない奴は何百町歩やっても喰えないのだ」とは、1996年に92歳で亡くなった勝部徳太郎氏(北海道栗山町)から聞いた言葉である。1970年代後半の初めには既に130haまで規模を拡大していた。それも、政策的に麦が切り捨てられようとしていた時代に、あえて麦の単作経営に取り組んでいた人である。規模的に小さな農業経営をテーマとする特集にそんな大規模経営者の言葉を引用するのは、経営規模の大小など農業経営の成立にとって本質ではないということをお伝えするためだ。

農業経営の成立要件とは、耕作規模の大小などではなく、その経営者が時代環境の中で社会あるいは顧客に必要とされて選ばれる経営創造を出来るか否かということに過ぎない。規模が小さいから経 営が成立しないなどボヤク人は、そもそも農業経営者たる資質を持っていないだけだ。

筆者が徳太郎氏に初めてお目にかかったころ、すでに勝部農場は現当主である征矢氏が経営の現場を預かっていた。でも、その経営理念は徳太郎氏と変わらない。現在の勝部農場の規模は170haを超しており、その内、約35haは大豆を作る。すでに40年以上、麦の連作を続けられる秘密は、畑に直径最大1mもの暗渠を張り巡らす圃場改良を続けるなどの麦作りの条件を作り続けているからだ。同時に、勝部農場は麦を作ることで、社会状況に変化によっては麦以外の何でも作れる圃場作りをしているのだ。

網走や十勝と比べて気象条件の悪い栗山町の麦の平均反収は3501kg程度。その中で勝部農場は常に全面積平均で600kg超え、断トツの収量と品質を誇る。

そんな勝部農場だが、徳太郎氏が農業を始めた時の面積は2.4haだった。読者にご紹介したいのは、勝部農場の規模拡大の歴史ではない。農業経営者が持つべき視点である。

関連記事

powered by weblio