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農薬や機械等の技術のほかにも必要とされる知的財産の保護
加藤:農薬や機械のメーカーは儲からないものには参入しない。以前、マイナー植物の農薬を登録するため、全農が業界や行政にお願いして行政から支援をしてもらったことがある。薬用植物についても国家プロジェクトとして助成し、業界にお願いするという取り組みが必要だ。また、品種についても、野菜は1万以上の種類があるが、薬草は十数種類しかない。薬草は50年は遅れている。種苗をどうやって手当てするかは結構難しい。種苗メーカーはF1が作れないと取り組む気にならない。生薬メーカーはどう考えているのだろうか。品種を作る時に、種苗メーカーから見るとトマトと甘草を比較したときにトマトのほうがはるかに難しい。消費者はトマトの味、匂い、形などが揃わないとブランド品として認めない。でも薬草は味や形は重要な要素ではない。
渡辺:甘草は成分があれば形が悪くても良い。
加藤:逆に、種苗メーカーとしては何を目標に品種改良をやれば良いか困るところもある。
長根:種苗が難しいのはF1では生薬は出来づらいことだ。現在、甘草や麻黄は種から育てておらず、栄養生殖をしている。クローン苗だと成分や育成状態が同じだが、実生苗だとどうしても成分や大きさにバラつきがでる。そのバラつきをなくすためにクローンを作る方法を採用している。
加藤:栄養生殖でやっていくときに、会社としての知的所有権は取れるのか?
長根:栽培方法は特許申請しているが、甘草は需要量も高いし、いろいろな使い方ができるので、連携先の自治体が地域振興に活用することに限ってはロイヤルティなどは求めていない。社会貢献の一環と薬用植物栽培普及のために行っているため、選抜した品種の苗も連携している自治体に提供するという形をとっている。
渡辺:品種の開発や新たな栽培方法などの知財は守れないんですかね?中国に真似されるのが目に見えていますから。
加藤:知財の登録はしなくてはいけない。何でもロイヤルティを取ってビジネスにするというのではなく、日本から出ていくのは困るので特許はとるがロイヤルティはなくすという形があってしかるべきだ。
長根:日本で特許をとるのは良いが、中国は特許を出したとたんに真似をする。栽培方法も真似されて広い中国で栽培されると、対処のしようがない。それは日本国内の支援のもとでやったのにあまり好ましくない。でも権利を押さえないと堂々と真似される。国際的に多くの権利を押さえるためには多額のお金がかかる。私達はなるべく国内で広め、国や地域に貢献したいということで種苗や栽培方法を提供している訳ですから、国のほうで権利をとってくれれば、非常に日本の技術が生きると思う。
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松田恭子 マツダキョウコ
(株)結アソシエイト
代表取締役
日本能率協会総合研究所で公共系地域計画コンサルタントとして10年間勤務後、東京農業大学国際食糧情報学科助手を経て農業コンサルタントとして独立。実需者と生産者の連携の仕組みづくりや産地ブランド戦略を支援している。日本政策金融公庫農業経営上級アドバイザー試験合格者。(株)結アソシエイト代表取締役。
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