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米政策改革大綱のその後
昆 続いてうかがいたいのは、自民党政権だった2002年に出された米政策改革大綱のことです。これについて、私は当時、歓迎するという記事を書いたんですよ。しかし、その後政局が変わるなかでこの大綱の理念というものが消えてしまったのではないか、と。そして、農政は10年や20年は逆戻りしてしまったように思うんです。あれはコメの生産流通にマーケットメカニズムを機能させながら、農水省がやるのではなく、生産者や生産者団体が自ら減反やマーケティングしなさいということでした。JA全中や自民党の農林部も認める格好で出たわけですよ。今、大臣になられて、これまでを振り返ってどう思われますか?
林 当時の状況とはだいぶ変わってきていますが、私は、今のコメ政策が逆戻りにはなっていないと思うんですね。たとえば、消費者に売れるものを作ろうと、銘柄化が進んで、「つやひめ」が「コシヒカリ」に負けないくらいにきていますね。改革の速度についてはいろいろ議論があるでしょうが、方向としては間違いなく当初の目的に向かって進んでいると思います。コメの価格が高すぎるとか、流通に問題があるんじゃないかというご指摘もいただいています。生産調整についてもペナルティーかどうかという議論がありますが、インセンティブは面積ベースから数量ベースに変わってきたわけです。一方で、野菜や果樹については何もないところである程度の需給の見通しを出してほしいという人もいます。
昆 私は、それもやるべきじゃないと思う。麻薬中毒ですから。
林 その見通しをマクロでやったほうがいいのか、保険でならすのかは昔から議論があります。ならすときに、今、果樹の災害が出ているのに、共済には3割ぐらいしか入っていただけないとかいろいろなことがあります。やはり、米政策改革の方向でできることをきちっと進めていくということだと思います。
昆 今の戸別所得補償制度は減反政策とリンクしていますね。需給調整を国がやっていることについては、どうお考えですか。国ではなく民でやろうというお話だったわけですけれども。
林 仮の話として、数量の調整を、マクロで、たとえば作況指数もやめてしまって誰がどれくらい作るかも全く分からずにすべて市場のままに任せるというならば、それは逆にいえば、独占禁止法が想定するような事態を招きかねない。独禁法がなぜできたかといえば、すべてをプレーヤーに委ねたときにどうしてもひずみが生じてしまう。それを調整することをしないと、いろいろなひずみが起こるので、そうならないようにということですね。先ほどのコメの価格が高すぎるとかの指摘にしても、そうした事態が起きることを心配しているわけでしょう。丸裸でプレーヤーだけでやるというのは、今、普通の工業製品でもないと思います。
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林芳正 ハヤシヨシマサ
農林水産大臣
1961年山口県生まれ。1984年東京大学法学部を卒業後、三井物産(株)入社。91年ハーバード大学政治学大学院特別研究生として渡米。92年9月ハーバード大学ケネディ行政大学院に入学。93年2月に父の林義郎大蔵大臣から政務秘書官に任命されて帰国。94年6月ハーバード大学ケネディ行政大学院修了。95年参議院議員選挙で初当選。99年大蔵政務次官、06年内閣府副大臣、08年防衛大臣、09年内閣府特命担当大臣などを経て12年12月から現職。
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