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――ネット情報が基ですか……。
そうやって韓国の野党がご丁寧にまとめたものを、実は日本でもTPP反対のためにそのまま使う人が出てきたんです。あるいは民主党の国会議員が本で触れたり、農業関係の新聞や雑誌がいっぱい書いたり。日本ではそうして毒素条項が広まりました。
――たしかに日本でTPPの話が持ち上がってから、毒素条項については「巷で言われている」みたいな形容詞が付きました。当時は聞きなれない言葉だったから私は違和感を覚えたんです。でも、あれはつまり、韓国で噂されていたということなんでしょうね。
向こうで市民権を得た言葉ということなんでしょう。
――日本は言葉とともに、反対論を韓国から輸入してきたわけですね。
そうですね。「毒素条項」で韓国が不利益を被るという論調は、日本のTPP反対派にとってみれば都合が良い。日本と韓国は経済構造が似ているし、TPPは日米FTAの側面がある。だから、日本がTPPを結んで韓国と同じような毒素条項を飲まされれば、大変なことになるぞ、と。韓国で起きているような経済的な不利益が日本にも襲いかかってくるということを言いたいわけですね。実際にはそんなことは起こっていないんですが、そういった宣伝を反対派が盛んにするようになった。
正攻法の議論を
――日本同様に、米韓FTAのときには向こうのマスコミも相当騒いだんでしょうね。
3大紙ではありませんが、日刊で全国紙のハンギョレ新聞と京郷(きよんやん)新聞がとにかく連日のように反対の記事を書きたてましたよ。
――ネット情報に乗せられたわけですか。
その点で重要であるのは、誤った記事が報道されると韓国政府は反論の報道資料を出すんですね。このあたりはしっかりしているんです。
――日本ではまずないですよね。
日本では新聞に書かれても反論を出さない。よほどの認識違いがない限り。それだから事実でないことがまかり通ってしまう。一方で韓国政府は、毒素条項については一個一個に反論するペーパーを出しています。毒素条項以外も含めれば、反論資料は600ページに及ぶものです。これは日本政府も学ぶべきですね。問題なのは、日本には毒素条項だけが来ていてですね、この反論が来ていないことです。
――たしかに日本では米韓FTAの反対派の主張ばかりが紹介されていますよね。先生が著書『TPPの正しい議論にかかせない 米韓FTAの真実』で政府の反論を扱っているのは、米韓FTAについて賛否両論を見てもらいたいということですか?
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高安雄一 タカヤスユウイチ
大東文化大学
経済学部社会経済学科教授
1966年生まれ。90年に一橋大学商学部を卒業後、経済企画庁入庁。99年に外務省在韓国大使館二等書記官、2000年に同一等書記官などを経て、10年から大東文化大学経済学部准教授、13年教授。著書に『TPPの正しい議論にかかせない 米韓FTAの真実』のほか、『韓国の構造改革』『隣りの国の真実 韓国・北朝鮮篇』がある。韓国農業に関する論文も多数。
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