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【岡本信一の科学する農業】
数値管理の指標をつくる考え方(3)
- (有)アグゼス 代表取締役社長 岡本信一
- 第20回 2013年06月14日
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露地栽培で天候の影響をどのように数値として表すのかというのは非常に難しい問題である。普通に考えれば気温や湿度、降水量などの気象データから天候を把握しようとする。気象の状態を測定して知ることは大事なことだが、実際の生産現場で利用するのは容易ではない。 気象データは、大雑把に地域の平均的な収量予測などには役に立つ一方で、個々の圃場の収量の予測にはほぼ役に立たない。なぜなら、同じ気象条件下にあったとしても、個々の土壌の条件が違えば収量が大きく異なるからだ。
分かりやすく例を挙げてみると、同じ地域に水はけの良い場所と悪い場所があった場合、降水量が多くなればなるほど、双方の圃場の収量は違ってくるだろう。その違いを知るためには、それぞれの圃場の水はけがどの程度なのかを調べる必要がある。気温などの気象条件を正確に測定したとしても、土壌の条件による違いを把握できなければ圃場ごとの収量や品質との関係が定量的に明らかにはならない。個々の圃場の収量に与える天候の影響がどの程度なのかを知りたい場合、気象の測定だけでは足りず、土壌の特徴も合わせて考えることが必須である。
次に施肥による収量の違いはどうしたら把握できるのかを考えてみる。施肥の違いによる収量や品質への影響は、土壌の養分量の測定をしても、残念ながら分からない。土壌の化学分析の結果が収量に直結しない理由は、土壌の化学的要因よりも物理的要因の方がはるかに大きな影響を与えるためである。土壌の物理特性は、特に根の張りに影響を与えると考えられる。土壌の化学性が同じだとしても物理性が違えば根の張りが違い、養分の吸収に影響を与えてしまう。
たとえば、リン酸は土壌としっかり結びついているので、作物の根毛と呼ばれる細かい根が発達していないと吸収できない。根毛は酸素の要求量が大きく、気相率が高い土壌において発達する。作物がリン酸を吸収しやすい条件は土壌中に酸素が多く、比較的軟らかいことである。水はけの悪い土壌に降雨が多いという条件が重なると、土壌中の酸素が雨水によって減り、根毛の張りは悪くなる。リン酸の吸収率のように天候や土壌の物理的条件が土壌の化学性に影響を与えることもあるのだ。
このような難しい理屈を述べるまでもなく、農業現場を知っている方であれば土壌の化学分析値から収量や品質を正確に予測することができないことは既知の事実だろう。
さらに、窒素の量は一般的な土壌分析で言及されていないことが多い。栽培において窒素は重要な要素であり、多くの作物が硝酸態窒素を好んで吸収する。この窒素の元々の形態はアンモニア態であったり、有機質であったりする。硝酸イオンやアンモニアイオン、有機物などと結びついたそれぞれの状態の窒素量は分かるが、作物が吸収可能な窒素の量については指針が示されていないことにお気づきだろうか。作物の生育中に土壌中で変化している量が分からなければ、窒素の量を正確に把握することは実に難しい。
となると土壌の化学性というのは、どの程度栽培に影響しているのだろうか。私自身のこれまでの調査の結果では、土壌の化学性が適当なバランスの範囲内にあると土壌養分の栽培への影響は軽くなり、施肥の違いも相当大きくなければ変化が現れない。土壌の物理的要因に比べて影響が少ないとはいえ、これまでの施肥の基準量より大幅に減らしたりすると収量や品質が向上することが多い。一般に基準とされている施肥量がいかに当てにならないのかということは皆さんもご存じだろう。
次に施肥による収量の違いはどうしたら把握できるのかを考えてみる。施肥の違いによる収量や品質への影響は、土壌の養分量の測定をしても、残念ながら分からない。土壌の化学分析の結果が収量に直結しない理由は、土壌の化学的要因よりも物理的要因の方がはるかに大きな影響を与えるためである。土壌の物理特性は、特に根の張りに影響を与えると考えられる。土壌の化学性が同じだとしても物理性が違えば根の張りが違い、養分の吸収に影響を与えてしまう。
たとえば、リン酸は土壌としっかり結びついているので、作物の根毛と呼ばれる細かい根が発達していないと吸収できない。根毛は酸素の要求量が大きく、気相率が高い土壌において発達する。作物がリン酸を吸収しやすい条件は土壌中に酸素が多く、比較的軟らかいことである。水はけの悪い土壌に降雨が多いという条件が重なると、土壌中の酸素が雨水によって減り、根毛の張りは悪くなる。リン酸の吸収率のように天候や土壌の物理的条件が土壌の化学性に影響を与えることもあるのだ。
このような難しい理屈を述べるまでもなく、農業現場を知っている方であれば土壌の化学分析値から収量や品質を正確に予測することができないことは既知の事実だろう。
さらに、窒素の量は一般的な土壌分析で言及されていないことが多い。栽培において窒素は重要な要素であり、多くの作物が硝酸態窒素を好んで吸収する。この窒素の元々の形態はアンモニア態であったり、有機質であったりする。硝酸イオンやアンモニアイオン、有機物などと結びついたそれぞれの状態の窒素量は分かるが、作物が吸収可能な窒素の量については指針が示されていないことにお気づきだろうか。作物の生育中に土壌中で変化している量が分からなければ、窒素の量を正確に把握することは実に難しい。
となると土壌の化学性というのは、どの程度栽培に影響しているのだろうか。私自身のこれまでの調査の結果では、土壌の化学性が適当なバランスの範囲内にあると土壌養分の栽培への影響は軽くなり、施肥の違いも相当大きくなければ変化が現れない。土壌の物理的要因に比べて影響が少ないとはいえ、これまでの施肥の基準量より大幅に減らしたりすると収量や品質が向上することが多い。一般に基準とされている施肥量がいかに当てにならないのかということは皆さんもご存じだろう。
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岡本信一 オカモトシンイチ
(有)アグゼス
代表取締役社長
1961年生まれ。日本大学文理学部心理学科卒業後、埼玉県、 北海道の農家にて農業研修。派米農業研修生として2年間アメ リカにて農業研修。種苗メーカー勤務後、1995年 農業コンサ ルタントとして独立。 1998年(有)アグセス設立代表取締役。農業 法人、農業関連メーカー、農産物流通企業、商社などの農業生 産のコンサルタントを国内外で行っている。講習会、研修会、現地 生産指導などは多数。無駄を省いたコスト削減を行ないつつ、効率の良い農業生産を目指している。 Blog:「あなたも農業コンサルタントになれる」 http://ameblo.jp/nougyoukonnsaru/
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