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物質循環としての自給飼料
昆 自給飼料の取り込みを進めることは、農業と土の物質循環をどうしていくかという観点からも重要ですよね。
叶 その通りです。酪農家は価格競争力をつけるために規模拡大を進めていますが、そうなると家畜糞尿の処理が問題になってくるんですよね。糞尿の処理ができないから、規模拡大ができないということがある。この問題が一番のネック。ライ麦の提案もこれに絡んでいてね。水田でコメだけ作っているだけなら、とてもそのまま堆肥はまけない。だけど裏作でライ麦を作れば、堆肥を十分に吸収してくれるから、翌年の稲作に影響しないんですよね。だから効果的に堆肥を吸収してくれるというのは非常に大事な話であって、これを解決できてはじめて規模拡大ができる。
昆 叶先生と同じような意味合いで僕はトウモロコシを提案しているんです。それも水田農家が子実トウモロコシを作るんです。いま配合飼料価格は1kg当たり70円を越しているんですよ。円安が進めばもっと高くなる。ただ、いまは水田転作で飼料を作ると10a当たり3万5000円の交付金が付く。実は北海道の長沼で柳原君という読者がトウモロコシを作ったんです。それを運賃込みで兵庫県の養鶏業者に50円で売ったんですよ。このうち運賃は10円なので、実質は40円ぐらいでいける。それにトウモロコシも吸肥性は良いですから。これから作ってくれる農家を増やしていきたいと思っています。
叶 それはいいですね。
昆 それなのに、いまは交付金がつくから餌米とか飼料米とかが増えている。何しろ10a当たり8万円も交付されるんですからね。さらに耕畜連携すれば1万3000円足され、9万3000円になる。交付金だけで9万3000円ですよ。すごい金額ですよね。
円安はイノベーションの好機
昆 餌に関する補助金をみても、赤字分を補てんするようなやり方をしてますでしょ。
叶 それは経済原則に反します。価格が上がったら、それを節約するイノベーションを起こすべきです。ところが、補助金で飼料高騰分を補てんすると、節約は進まない。そもそも配合飼料を多く与えると牛の母体を悪化する。そのような補助金より酪農の産業構造そのものを変えていくべきです。餌の供給構造を変えればいい。そうすると、そういう対処療法的なことに金を出さなくて済む。イノベーションを促進させるために金を使えばいい。
昆 でも、現実はイノベーションをさせないために金を使っている。
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叶芳和 カノウヨシカズ
評論家
1943年、鹿児島県奄美大島生まれ。一橋大学大学院経済学研究科 博士課程修了。元・財団法人国民経済研究協会理事長。拓殖大学 国際開発学部教授、帝京平成大学現代ライフ学部教授を経て2012年から現職。主な著書は『農業・先進国型産業論』(日本経済新聞社1982年)、『赤い資本主義・中国』(東洋経済新報社1993年)、『走るアジア送れる日本』(日本評論社2003年)など。
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