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特集

肥料減で品質安定&コストダウンを狙う 基肥一発型から追肥主義の施肥体系へ

本誌では、かねて過剰施肥を戒める特集を続けてきた。さらに、作物の栄養周期に合わせた追肥主義に関しても。圃場規模が大きいために追肥体系になることの困難さを語る人もいるが、水田農家でも早くから「への字」稲作に取り組む人もおり、さらに最近では粒状であれ液体であれ肥料散布のさまざまな機械手段が導入されている。  今回、改めて追肥主義の施肥体系を呼びかける理由は、言うまでもなく農産物の品質安定とコストダウンのためである。特に本誌が危惧することは、高齢化の進行を見越した惣菜ビジネスや食材配達業の成長である。現在、生産されている野菜は、生産、中間流通、消費の各段階で、約40%程度が廃棄されていると言われている。しかし、今後、惣菜・宅配ビジネスが成長していった場合、この40%もの生産物が供給過剰になるのである。さらに、深刻なのは、我が国で生産されている野菜類の流通歩留まりの低さが、惣菜加工業と契約する卸業者のなかで問題になっていることである。  例えば夏場の高原野菜産地から2~3日程度で加工業者に渡る野菜の歩留まりが、船でカリフォルニアから運ばれてくる野菜より悪いというのである。つまり、日本産地の野菜は腐れが多いということを示している。カリフォルニアの圃場での予冷から需要者の手元に届くまでの徹底した品質管理の高さもあるが、一番大きな理由は、我が国の生産過程の過剰施肥による品質劣化である。カリフォルニアの恵まれた栽培条件を羨むより、夏野菜に限らず我が国の施肥のあり方が高コスト構造だけでなく、品質や収量へも影響していることを看過してきたことを省みてはどうだろうか。日本の野菜が価格ではなく品質においてカリフォルニア産に比べて見劣りし、需要者に敬遠されかねない状況なのだ。  適正施肥を実践する経営者のお話を含めて、本特集を通して読者諸氏に施肥について改めて問題提起をしてみたい。 (昆吉則)


天候の影響を小さくする秘訣は、追肥を中心とした施肥体系

農業コンサルタント 岡本 信一

農業経営と栽培技術とは不可分の関係にある。その理由は簡単で、自らが理想とする経営を行なうためには、経営に見合う栽培技術を持っていなければ実現することができないからである。どのような素晴らしい経営計画があったとしても、予定通りに作物ができなければ絵に描いた餅に過ぎない。
今後の農業経営において、私が非常に重要だと考えているポイントがある。天候不順でもいかに通常通りに作物を栽培できるのか、安定的に供給できるか否か。簡単にいえば安定供給ということである。農産物の価値についてはいろいろ考えられるわけだが、品質重視といわれる現在でも、この安定供給の重要性は農耕が始まった時から全く変わっていない。むしろ、周年であらゆる農産物が供給されるようになり、その重要性は増しているといってもいい。
どのような作物でも、天候が悪い時でも供給できれば、儲かるのは間違いない。また、顧客からの信用も絶大なものとなるだろう。多くの方はこの点について異論はないと思うが、「天気が悪い時に普通にとれれば苦労しない」という言葉はよく聞く。では、天候の影響を軽減できる方法はあるのか。すでに多くの対策はされていると思うのだが、あまり考慮されていない技術もある。
露地栽培の場合に播種または定植後の管理というと、除草や防除が中心になるが、もう一つ、追肥も重要な作業である。追肥は、栽培中の作物の生理状態を変えることができる唯一の管理作業である。しかし、一般的には収量や品質の維持・向上という観点から行なわれるのがほとんどで、左右されがちな天候への対応が可能だということを意識されている方はほとんどいない。
どのような経営形態であれ、天候の影響を小さくすることは経営に大きく寄与する。その一つの技術として施肥があるというわけだ。日本のように雨の多い国では、雨を敵に回していては、安定的な経営を営めない。特に追肥主義の施肥体系は、天候の影響を小さくするために最適の技術の一つである。
散布機械や肥料・資材などの発展により、追肥を中心とした栽培技術も実用的に行なえるようになってきた。施肥を活用した技術管理は、まだ始まったばかりである。

【栄養週期理論に基づく作物の生理から施肥を考える】

追肥を含む肥培管理はその作物の生理から考える必要がある。肥培管理というのは作物に必要な栄養分を施すためのもので、不必要な肥料分を与えれば作物の健康状態を悪化させることがあるからだ。また、天候に対する影響を軽減するには、作物の生理を理解しなければ対応できない。
これまでもよく紹介してきた栄養週期理論に基づいてポイントを解説していく。非常に重要なのは基肥に対する考え方である。ただし、実際には機器や資材、栽培管理方法による制限があるため、あくまで作物の生理的な説明どおりにそのまま実践できるというわけではない。応用編は後述を参考にされたい。

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