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土門「辛」聞

「先祖代々」の農地に対する農家の「タテマエ」と「ホンネ」

農地問題の解決は、農地に対する農家の「ホンネ」を見抜くことが最大のポイントとなります。ところが政府の農地問題への対処をみておりますと、このホンネを見抜けないのか、あるいはそれが分かっていても、ツボを心得た正しい政策をいまだに打ち出せないのです。破格の補助金を用意した「人・農地プラン」は所定の成果を上げることはできなかったようです。2014年度から鳴り物入りでスタートする「農地中間管理機構」も、先の政策と同じような轍を踏むものと思います。
農地に対して抱く農家のホンネの部分、ズバッと言いますと、その「先祖代々」と公言してはばからない農地を、実は自分の目の黒いうちに高値で処分してしまいたいということなのです。すべての農家がそうであるとは言いません。そうした農家が、われわれの想像以上に多いと理解していただきたいのです。よく農家は、農業のためとか、先祖代々の農地を守りたいとか、そんなことを口にしますよね。これって、現場をみておりますと、農地を高値で売り抜けるタイミングを計るためのタテマエではないかとつい思ってしまいます。

農地解放で取得した農地も「先祖代々」を名乗っている

なかんずくタテマエとしてはかなり説得力があるのは、「先祖代々」というフレーズではないでしょうか。「先祖代々」が何世代前からのことを指すかの定義は広辞苑を調べてみてもありません。一般的に「先祖代々」には少なくとも数代続いてきたという暗黙の了解のようなものがありますが、こと農地に関しては戦後の農地解放(1947年~50年)を目安にする見方もあります。農地の所有事情を一変させたことから、取得時期を農地解放の前後で区分けする方法はどうでしょうか。もちろん農地解放前に取得していた農家が、胸を張って「先祖代々」の農地所有者と定義しておきたいのです。
現在、全国に252万戸の農家(08年センサス)がいます。その分け方を使って、正真正銘、「先祖代々」と名乗れる農家数を推定し、戦後の農地解放について振り返ってみたいと思います。
この農地解放が、当時、日本を占領していた米国や英国など連合国軍マッカーサー最高司令官によって強力に推進されたことは、ご存知ですよね。「地主制」の存在が日本の民主主義の妨げになるという理由でした。不在地主については全貸付地、在村地主については貸付地の保有限度を超える農地について国が買収し、小作農に売り渡して自作農、土地持ち農家にしてしまったのです。
農地解放の恩恵を受けた農家は、農水省の「農地等開放実績調査(50年8月1日現在)」によると、面積ベースで46%という数字でした。約半数が小作農だったという推測に立てば、「先祖代々」と胸を張っていえる農家は約半数ということになります。

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