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技術解説

飼料の自給割合75%で製造コスト大幅ダウン 北海道美瑛町でのイアコーン栽培の取り組み

我が国の畜産飼料、特に濃厚飼料の自給率はわずか10%と輸入に依存している。 国土が狭く、食糧生産を優先してきた結果、飼料を生産することが軽んじられてきたのかもしれない。 ところが乳牛の餌であるTMRの製造コストを削減するためのイアコーン栽培は着実に実績を積んでいる。 北海道美瑛町の取り組みを紹介する。
北海道美瑛町のTMRセンター、有限会社ジェネシス美瑛の飼料自給割合は75%に及ぶ。自給割合を高める目的は、飼料の製造コストを下げることに尽きる。それを支えるのが「イアコーンサイレージ」である。同社の代表を務める浦敏男氏(64)によれば「今年は最初の取り組みから6年目で、240ha作付けしたトウモロコシのうち最大約50ha分をイアコーンサイレージとして収穫する見込みだ」という。今年の自給飼料の作付面積は、トウモロコシのほかに牧草526ha(管理草地畑の採草地216haを含む)がある。

イアコーンサイレージとは

飼料作物の代表格であるトウモロコシだが、どの部分を用いるかによって呼び名が変わる(図1)。根元から刈り倒して茎葉とトウモロコシの実の部分である雌(し)穂(すい)を丸ごと利用するのがWPCS(ホールプラントコーンサイレージ)。イアコーンサイレージとは子実、芯、包皮の部分だけのサイレージのことをいう。
飼料用トウモロコシの国内の作付面積は2012年で約9万2000ha(農林水産省・作物統計)だが、ほぼ全量がWPCSとして粗飼料になる。WPCSもイアコーンも耕うんから播種、管理までの作業は同じで、収穫する部位によって異なる収穫機で刈り取る。イアコーンを収穫する場合の茎葉等の残渣物は細断して圃場にすき込む。
ジェネシス美瑛は08年にイアコーンの栽培を始めた。07年7月に設立された同TMRセンターは現在8軒の酪農家によって構成され、構成メンバー8軒が飼育する約1200頭の乳牛に加えて、構成メンバー以外の8軒の酪農家にもTMRを供給している。TMRの価格は構成する酪農家の経営が成り立つように設定されるため、製造コストを下げなければTMRセンターの経営状態に響く。特に設立前の06年頃から輸入飼料に依存した配合飼料の価格高騰は顕著になり、自給割合を高めることは至上命題だった。
その頃、パイオニアハイブレッドジャパン(株)よりイアコーンを収穫するためのスナッパヘッドがあるので試してみないかとの声がかかり、0・5haでイアコーンの栽培を試したのがきっかけだ。手応えを感じた浦氏は翌年に7ha、3年目に24・44haとイアコーンの面積を拡大し、昨年より50ha規模に達した。ただし、今年は干ばつの影響で収穫面積は減る可能性もある。

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