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「底あり水田」と「底なし水田」
湿田は排水性が乏しいことからも水田下層に縦浸透性の低い土層が存在する。言わば水田に水を溜められる「底」が存在すると考えられる。一方、代かきを行なわないと漏水するような乾田は、前述の「底あり水田」に対して「底なし水田」と表現できる。これらの水田断面の模式図を図4に示す。従来の代かき移植体系では、いずれの水田においても作土層および作土層直下に代かきによる不透水層が形成され、湛水機能が発揮されていた。しかし、乾田直播では底あり水田と底なし水田では異なった対応をしなければならない。
底あり水田では、圃場整備の際に水田汎用化を目的とした暗渠による排水改良が行なわれることが多い。暗渠が備わった水田は水こうにより一筆ごとに独立した水管理のできる一面のプール構造になっている。乾田直播の導入に適した圃場条件となる。具体的には苗立ち後の入水までは暗渠を解放して排水を促進させ、入水時に水こうを閉めて湛水させる。これまでの代かき水田のように耕盤層によって湛水するのではなく、暗渠と暗渠より下の不透水層により湛水させる方法である。
現在、乾田直播を続々と導入している地域は、排水不良水田を暗渠導入によって排水改良した事例が多い。このような水田で乾田直播を成功させるには、暗渠を効果的に利用することが重要なポイントとなる。
底なし水田では、代かきなしの条件では適正な減水深が得られないので何らかの対策を講じる必要がある。乾田直播では、播種前および播種後の鎮圧作業により図4左下に示すように、地表面付近に浸透を抑制する止水層を形成させ、湛水機能を発揮させることができる。
ここまで、乾田直播と水田の利用形態の変化について、水田の無耕盤化と排水機能と湛水機能の切り替え手法ついて述べた。次回は乾田直播での具体的な水田利用方法について、底なし水田での鎮圧による浸透抑制手法、底あり水田における暗渠の効果的な利用方法について報告する。
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