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今月の数字

2兆5,000億円 介護食の潜在市場規模

健康や栄養に関する食品の表示で「特定保健用食品」といえば、トクホとしてすっかりおなじみだが、「特別用途食品」という表示があるのもご存じだろうか。乳児、幼児、妊産婦、病者などの発育、健康の保持・回復などに適するという特別の用途についての表示で、例えば、2005年4月より軽度から中等度の脱水状態に適した食品(厚生労働省許可・特別用途食品・個別評価型病者用食品)として販売されている経口補水液がある。この経口補水液は、水に糖と食塩を入れることで脱水症状により水分が吸収できなくなった大腸に代わって小腸から水分と栄養分を補給できることがわかり、十分な医療設備がなく点滴治療が困難な発展途上国で普及してきた。ここ数年の猛暑と節電で脚光を浴び、ドラッグストアでも最近見かけるようになった。
特別用途食品は、09年の改正で糖尿病食調製用組合わせ食品(組合わせ食品)などがカテゴリーから外されたこともあり、許可数が500件以上から44件に激減した。このため、日本健康・栄養食品協会は、特別用途食品の制度の活性化に向けた研究会を今年8月に発足させた。
この活動の背景には、病者や高齢者の食市場を巡る最近の活況とややこしさがある。いろいろな資料をもとに整理すると、この市場は、対象によって「治療食」「介護食」「高齢者食」の用途に分けられる。治療食は、病人を支え、疾患の回復をより効果的にし、治療の目的を果たすもので、病院給食では腎臓食、肝臓食、糖尿食、胃潰瘍食など12種類が特別食として1食当たり76円の保険給付加算が受けられる。医療機関で使われている治療食1,200~1,500億円に加え、最近では自宅で病気療養している病者に民間宅食事業者が配送する事業も増えており、宅食部門での市場規模拡大が予想される。

介護食は、流動食、やわらか食、栄養補給食、水分補給食、とろみ調整食品・固形化補助剤などだが、要介護者から活動的な高齢者まで利用者が幅広く、介護食についての統一的な規格基準もない。富士経済が7月に発表した調査結果では、流動食、やわらか食、栄養補給食、水分補給食、とろみ調整食品・固形化補助剤だけでも1,020億円の市場規模があり、高齢者人口の増加により20年には1,286億円と予測されている。

しかし、介護食について要介護者数などから介護食品のニーズを試算する(介護保険制度上の1日当たりの基準1,380円×365日×要介護者数506万人)と、約2兆5,000億円となり、広義の介護食としてまだまだ潜在的なニーズがある。

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