ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

シリーズ水田農業イノベーション

特別編 水田での子実トウモロコシ生産の実際(前編)~柳原・盛川・宮川氏の経営実験の報告と提案~


盛川氏の今年度のトウモロコシ生産に要した作業を表1に示した。その機械作業体系を見ると、ベースとしては乾田直播、さらに大豆とはまったく同じ機械による作業である。作目にトウモロコシを加えることで、盛川氏の機械償却費はさらに下がるわけだ。同氏は今年、麦、大豆の収穫のためにニューホランドのコンバインTC5070を導入した。この機械にとってもトウモロコシがもう一つの作物になるということだ。

干拓地・大潟村でのトウモロコシ 宮川正和氏(秋田県大潟村)

宮川氏がトウモロコシを播いたのは大潟村の転作田30aと北秋田市の畑2ha。播種機は盛川氏と同じモノセムの真空播種機だが、ロータリー耕後に播種して鎮圧もしなかったため、その後の乾燥で発芽が遅れた。播種も本来なら5月25日ごろが望ましかったが、6月5~6日まで遅れ、当初は実を取るには間に合わないのではないかと心配されていた。
品種は108日と115日タイプを使った。大潟村の115日タイプは遅播きによる減収はあるものの、白戸氏の目測では10a当たり600kg程度はあるとのことだった。一方、より緯度の高い北秋田では115日タイプにはやや無理があり、108日タイプのほうが適しているのではないかという。
宮川氏のケースで注目すべきことは、除草剤を使わずにカルチを2回かけただけで雑草に負けなかったということ。発芽が遅れたにもかかわらず、宮川氏は「これまで作ってきた作物の中でこんなに手間のかからない作物はない。しかも、トウモロコシは生長が早いので雑草より早く優勢となり、オーガニックでも十分できる」と話していた。

単価や交付金額ではなく投下資本・労働力当たり収益に注目

もう一度、盛川氏の作業工程と時間(表1)を見ていただきたい。乾燥の時間を加えて約70aのトウモロコシ生産に要した総労働時間は490分。10a当たりに換算すると1.1時間だ。移動時間や機械調整の時間は含まれてはいないが、その投下労働時間の少なさに注目していただきたい。
ちなみに、生産費調査で他の作物との10a当たりの投下労働時間と生産コストを比較するとこうなる。
柳原氏が2012年度に自らのコントラクター料金で計算した子実トウモロコシの生産コスト(表2)は、2万3000円である。これに対して、15ha以上規模のコメ(11年度生産費調査)では、労働時間は13.64時間で、コストは9万6876円。大豆(12年度生産費調査)では労働時間は8.22時間で、コストは6万4083円。また、15ha以上規模の小麦(12年度生産費調査)では、労働時間が3.91時間、コストが5万8141円である。子実トウモロコシが圧倒的にコストも労働力も少ないことがわかるだろう。さらに、島根畜試が10ha規模で湛水直播をした稲WCSの例でも、コストは7万5908円(収量は2t/10a)、労働時間は7時間もかかっている。

関連記事

powered by weblio