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シリーズ水田農業イノベーション

特別編 水田での子実トウモロコシ生産の実際(後編)~国内生産と地域での耕畜連携の未来像~




投下資本・投下労働力が少ない
戦略品目としての価値


1970年以来43年間にもわたるコメの減反政策は我が国の農業、とりわけ水田農業の産業的発展に負の影響をもたらしてきた。減反政策の継続は、むしろTPP体制のなかで急務とされるコメ農業の体質強化やコストダウンの妨げとなり、我が国のコメはますます競争力を失っていくということになる。
そもそも、農業の産業的発展より農業団体の組織維持を優先する農協の農政運動によって、我々が意図するような農政の転換を期待するのは極めて困難であると筆者は思っている。政治的に農政改革を求めることより、農業経営者が実需者や消費者の支持を得られる生産活動に取り組むことが肝心なのである。
本来、経営者が考えるべき経営視点は前号で紹介した通り、単位面積当たりではなく、投下貸本・投下労働力当たりの収益にあるはずだ。水田経営における品目別の物財費と作業時間を表1で比較した。実際の経費から労働費を差し引いた10a当たりの物財費は水稲の6万3454円、大豆の3万8719円、小麦の4万4801円に比べて、子実トウモロコシは2万3000円と最も少ない。労働時間も水稲の15.09時間、大豆の8.22時間、小麦の3.91時間に比べて、子実トウモロコシは圧倒的に少ない1・1時間である。水田経営のなかで投下資本、投下労働力がともにかからない品目として、子実トウモロコシは重要な品目になり得るのである。
14年度予算の経営所得安定対策の交付金について表2に示した。子実トウモロコシは飼料作物として水田転作の最低限の3万5000円の交付金が見込まれている。少なくともこの交付金を受給できれば、東京市場での先物価格に匹敵するキロ当たり25~35円(トン当たり2万5000~3万5000円)程度で供給したとしても水田農家としての収益が確保できるという試算が可能である。さらに、実需者としての畜産・酪農家や中小の飼料販売業者に対して、子実トウモロコシを地域で自給することによるメリットを提案し、水田イノベーションと食糧・飼料自給率の向上を目指すべきなのではなかろうか。
14年度予算では飼料米や稲WCSの生産には10a当たり9万3000円のこれまでの耕畜連携助成も含む金額加えて、数量支払で最大10万5000円という法外な交付金がつく。飼料米生産振興は財政負担の面からも、それほど長くは続けられないだろう。数年後には、現在の海外からの輸入を前提とした飼料生産システムを変更するための政策的支援も出てくるのではないかという期待が高まる。現在の海外からの輸入に頼りきった穀物を原料とする配合飼料の加工・供給体制から、国内産原料を受け入れられるシステムに変えることができるなら、水田農業の改革と共に最大の輸入農産物であるトウモロコシの国内自給、ひいては食糧自給率の大幅の向上が実現するわけだ。

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