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1g1万円 希少糖プシコースの値段

12月2日のNHK番組「あさイチ」で紹介された希少糖の「プシコース」が話題を呼んでいる。希少糖とは、自然界に少量しか存在しない単糖だが、種類は50種類以上ある。現在、日本で使用されている希少糖は、エリスリトールやキシリトールなどで、近年になって新たにプシコースなどが加わってきた。
プシコースは、砂糖の7割程度の甘味がありながら、普通の砂糖が1g当たり4kcalに対して0.39kcalとほぼゼロ。さらに、「食後の血糖値上昇を緩やかにする」「内臓脂肪の蓄積を抑える」といった研究結果が報告されたことから、次世代の新たな甘味料として期待されている。
それにしても、「体内に糖として蓄積しない」プシコースは飽食の現代だからこそ歓迎されるものの、生物にとってまったく有益ではないわけで、そもそもなぜこのような糖が存在するのか不思議だ。
原始地球では、海中で多様な有機物が作られ、その一つ、ホルムアルデヒドをベースにしていろいろな糖が作られた。やがて海の中に生物が誕生すると、生物に必要とされた糖だけが生き残り、それ以外の糖は淘汰されていった。その結果、体内にエネルギー源として蓄積できるという特質を持つブドウ糖が増え、プシコースはかろうじて生き延びた。やがて生き物が進化して陸上に上がり、光合成によってブドウ糖を大量に作り出すようになってブドウ糖はますます栄えていった。
プシコースはなぜ生き残ったのだろうか? それは、植物の生長を抑制するという性質があり、その性質を利用して生き残った植物があったからだ。漢方薬として使われるユキノシタの仲間であるズイナという植物は、生長がとても遅く、他の植物に対して劣勢だったが、突然変異で自らはプシコースから身を守りつつ、周りの雑草を枯らすことができた。これまでの研究では、ズイナ以外の植物にプシコースは見つかっていないという。ズイナとの奇妙な共存関係により、地球上でわずか0.001%のプシコースが生き残ったのだ。
しかし、ズイナを大量生産しても、プシコースの生産量増はたかが知れている。また、プシコースの場合は生物にほとんど利用されてこなかったため、プシコースを作るために必要な酵素を生物が作ることができない。
そこで、香川大学の何森教授の研究室では、微生物が持っている酵素を探し求めた。1991年、キャンパスの土から分離した微生物を使って希少糖を作る実験をしていたところ、これまで見たこともない変わった物質が出現した。この酵素こそが、自然界に多量に存在するD-フラクトース(果糖)をD-プシコースという希少糖に変える作用を持っていたのだ。

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