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ほかにも絵や音楽をしながら、コメや野菜を作っている人もいる。まるで清水という磁力に吸い寄せられるように、人が集まってくるのだ。もはやここは「忘れられた場所」ではない。
農村に見る日本の未来
多くの発明や事業に取り組んできた清水には、思いついたら試してみるフットワークの軽さがある。だから趣味も多彩。中でもフランス発祥の球技であるペタンクでは日本選手権で三度、チャンピオンに輝いた。
旧三和町時代、町長に掛け合って国際規模の競技場を設営してもらった。それが功を奏し、ここで毎年数回の全国大会が開催されるなど、今やペタンカーなら誰もが知る場所となっている。大会のたびに全国から200~300人が訪れる。彼らは民宿に泊まり、地域経済を潤す。来年は日本選手権を開催する運びとなっているそうだ。
清水と同じように、副村長の山本も発想が豊かである。彼は、「ディズニーランドのように農場全体を客席にしたい」と豪語する。そのための仕掛けとして、一つは子どもたちのためにシーソーやツリーハウスをこしらえる。何しろ木は周りに豊富にある。伐採するほどに、荒地は減って遊び場が増えていく。
それから専門の会社と提携して、子育て中の親を対象に農作業を通じた人材教育に着手する段取りを進めている。養いたいのは観察力。作物や土を見ながら、そこに手を加えるタイミングを学ぶことが、子どもと接するうえでも役立つとみている。計画では、山本の名前を取った「しんちゃん検定」という試験を設ける予定。検定の合格者には証書を渡す。幼稚園や保育園、介護施設やキャンプ場などへの就職活動をする際、その証書を資格の一つとして役立ててもらうつもりだ。
彼らには旧態にとらわれるところがない。素直で好奇心にあふれた眼で農村の可能性を見つけ、それをカタチにする点において実に自由である。見方を変えれば、農村はまさに「宝箱」。それを独り占めせず、みんなと共有するところにダッシュ村の力強さがある。本稿の13年12月号で紹介した大阪府枚方市で杉・五兵衛を経営するのじま五兵衛(※)と同じように、清水やその仲間たちもまた、自分たちの村に日本社会の未来をみていた。 (文中敬称略)
※のじま氏の漢字がパソコンで表示が出来ない旧字なので平仮名表記とさせていただいております。PDFでは漢字表記しています、ご参照ください。
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清水三雄 シミズミツオ
(株)京都天田郡みわ・ダッシュ村
村長
1941年、京都府京都市生まれ。立命館中学校3年で記憶術に出会う。これを基にした連想術でさまざまな事業を起こす。役職はみわ・ダッシュ村代表のほか、日本最大のトラック駐車場の開発会社・⑭JPD清水社長、⑭日本マネジメント開発研究所会長、NPO法人京都SEINEN団理事など多数。フランス発祥のスポーツ・ペタンクでは第2回ペタンクジャパンオープンで優勝。後に国際大会にもたびたび出場する。珠算やゴルフなど特技も多い。
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