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シリーズ水田農業イノベーション

座談会・盛川周祐×高橋誠×昆吉則 子実トウモロコシの地域自給に向けて~畜産家、地域の飼料業者に新たな可能性が生まれる~

2012年の「A━1グランプリ」で、北海道長沼町の柳原孝二さんが発表してグランプリを獲得した「水田での子実トウモロコシ生産」。これをきっかけに本誌ではトウモロコシ生産を皆さんに呼びかけ、13年には北海道以外の府県で初めて盛川周祐さん(岩手県花巻市)と宮川正和さん(秋田県大潟村)にお取り組みいただいた。そのうちの盛川さんが収穫した子実トウモロコシは、同じ花巻市内の養豚家の高橋誠さんにその受け皿になっていただくことで、物流コストをかけない飼料の地域需給への取り組みが始まった。現段階では、きっかけができたに過ぎないが、こうした実例が出てこそ、このプロジェクトは現実化していくだろう。初年度の取り組みの感想と課題について両者の声を聞いた。 (取材・まとめ 平井ゆか)

両者にとって試行錯誤の連続

昆吉則(本誌編集長) 私のもとには子実トウモロコシについて話を聞かせてくれと問い合わせが数多く来ています。飼料作物として10a当たり3万5000円の交付金があるという前提ですが、私としては皆さんを煽ってきた一方で、子実トウモロコシ栽培の実現には、つくる側にも受け取る側にもたくさんの課題があると思っています。今日は、初年度の取り組みの感想と今後の課題をお二人にお聞きしたいと思います。
高橋誠(高源精麦(株社長) そうですね。今回は盛川さんに声をかけていただいて始まりましたが、畜産家全体にとって良い話だと思います。
盛川周祐((有)盛川農場代表) 今までにない事例だからね。でも、まだ右も左も分からない状況ですよ。
昆 花巻なら10a当たりおおよそ1tぐらいとれると思いますが、100haやって1000t。収穫後にその量をどこに貯蔵するのか、そのハンドリングはどうするのかなどいろいろと考えなくちゃいけません。盛川さん、まずは実践されてみて、どんな感想を持たれましたか。
盛川 トウモロコシは、基本的には大豆をつくるのと同じような体系です。ただ、食用になる大豆は農産物の検査があるから、商品に仕上げるのが結構シビアなんですよ。トウモロコシだと気を使わなくてもいいし、大豆の5倍の量がとれるということで、土地の生産性からみたら非常にいい作物だと思います。つくること自体は、基本さえ押さえればそんなに難しいことではないけれど、餌は量をきっちり確保しなければならないですよね。使う側のコストとつくる側のコストが合うようにするためには、どうすれば反収を800kgから900kgに、900kgから1tにできるのか。そこは、非常に重要なところだと思います。今回はそこまでやっていなくて、まずはつくってみた、という段階です。
昆 高橋さんの養豚の規模はどのぐらいですか?
高橋 常時6000頭を飼育していて、年間9600頭ぐらいを出荷しています。餌は配合した形で月間300tぐらいですね。飼料メーカーに指定配合で頼んで、週1~2回入ってきます。タンクの様子を見ながら見込み発注をしています。
盛川 配合飼料には何を混ぜているのですか?
高橋 トウモロコシと麦と大豆です。トウモロコシの比率は、6割から7割でしょう。トウモロコシは飼料の本流なので、今回の取り組みに私はワクワクしています。もちろんリスクもあるでしょうし、検証もしなければならないと思います。盛川さんから粉砕したサンプルを何度かいただいて、粒度の調整はまだまだ必要な状況ですね。鶏より豚はもう少し細かいほうがいいです。
盛川 「丸ごとのままじゃ無理だよ」ということだったんで、機械にざっと流して粉砕してみました。もっと抵抗をかければ粉に近くなりますよ。ところで、うちの国産トウモロコシを使うときには、どうやってメーカーから来た餌と混ぜるのですか?
高橋 いただくトウモロコシの量が少ないうちは、飼料メーカーから来たバルク車に袋入れするか、タンクの上から袋入れします。現状でも添加物とかは手作業で入れているので問題はないです。さらに量が増えれば交渉力がつきますので、飼料メーカーにまとめて配合してもらうこともできます。量が少ないとき、量が増えてきたとき、と柔軟に対応できると思います。

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