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【海外レポート】
オランダ農業とコンサルティング
- 紀平真理子
- 2014年01月28日
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補助金の打ち切りが
強いオランダ農業をつくった
オランダ農業にはさまざまな分野のコンサルタントが存在し、同国農業が発展する重要な役割を担っているといっても過言ではない。コンサルティングに特化した民間企業はもちろんのこと、農業関連企業は専門のコンサルタント部門を設置し、生産者をサポートしている。今回、訪問したGreenQ社は、2004年に設立したリサーチ、コンサルティング、教育の三部門を持つ100%の民間会社である。話を聞いたマネージングディレクターのAad van den Berg氏によると、オランダ国内に農業関連のコンサルティング会社が約10、個人事業主だと3、40人程度はいるそうだ。別の日に訪問したジャガイモの育種会社ではコンサルタント専門員を用意し、コンサルティング契約を交わした生産者に対してシーズン中のアドバイスと現地サポートを行なっている。有償だが、「コンサルティング契約を結ぶ=収穫と収益が保障される」とジャガイモ育種会社の営業部長が自信を持って話してくれた様子を見て、レベルの高さがうかがえた。
オランダではなぜ、民間のコンサルティング会社が存在感を示しているのか。歴史的背景から説明したい。60年代の高度経済成長期に多くの国民の生活が豊かになる一方で、農家は困窮していた。そこで政府は、小規模生産者が減少していたことと、将来的に補助金や資金援助の支出を減らすため、農業分野の輸出マーケット開拓に高い優先順位をつける。73年にオイルショックが起こると国内は混乱に陥り、初めて政党は極左派の労働党と自由主義経済を唱える右派の自由民主国民党に二極化した。そして、この国の存続危機と二大政党のけん制から生まれた数々の政策が現在の自由で合理的なオランダの礎となったのである。
農業政策もその一つだ。「OVO Traid」というリサーチ、コンサルティング、教育の三本柱からなる農業政策を掲げたことも農業が変化した一因といえる。DLV Plant社はこの政策に影響を受けて民営化した。70年代後半時点では生産者は無料でコンサルティングサポートを受けていたが、80~90年代に入ると幾分かのコンサルティング料金を支払うことを余儀なくされる。その後、00年に民間企業になったと同時に、移行期間はあったものの、金額は著しく上昇した。コンサルティングの質は上がったが、生産者は不満を口にした。しかし、「支払う」か「農業を辞める」という選択肢しかなかったため、続ける意思のある生産者は前者を選んだのである。また、63年には農場への投資の補助金を制定するとともに離農する人への資金サポートを行なう。この政策で63~73年は離農者への資金サポートが農場投資への補助金を上回った。その結果、意欲のある生産者だけが残り、現在のような知識と技術を大切にするオランダ農業が促進したといわれている。ちなみに、専業生産者はほぼ皆無で、1ha以下の農場もまずないそうだ。80~90年代には国際マーケットでの競争力を高めるため、特定作物への補助金の減額、または打ち切りを行なったり、品質スタンダードを定めて証明書を発行したり、知識や技術革新により注力するようになった。
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紀平真理子 キヒラマリコ
1985年、愛知県生まれ。2011年、オランダへ移住し、食や農業に関するリサーチ、本誌や馬鈴薯専門誌『ポテカル』への寄稿を開始。2016年、オランダVan Hall Larenstein University of Applied Sciences農村開発コミュニケーション修士卒業。同年10月に帰国し、農業関連記事執筆やイベントコーディネート、海外資材導入コーディネート、研修・トレーニング、その他農業関連事業サポートを行なうmaru communicateを立ち上げる。今年9月、世界の離乳食をテーマにした『FOOD&BABY 世界の赤ちゃんとたべもの』を発行。食の6次産業化プロデューサーレベル3認定、日本政策金融公庫農業経営アドバイザー試験合格。
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