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特集

障害者や高齢者らとつくる農業経営

障害者や高齢者が増え続ける中、彼らが働く場所として農業が話題になっている。花や家畜を育てることでの心身のリラックスという「農の福祉力」は以前から指摘されてきた。新たな観点から農業が注目されるのは喜ばしいことである。ただ、彼らを雇うことが経営を発展させるのでなければ、農業と福祉との関係は長続きしない。あまり知られていない就労の実態を見ながら、障害者や高齢者らとつくる農業経営のこれからを考えてみよう。 (文・編集/窪田新之助・清水泰)


いま、なぜ障害者や
高齢者らの雇用を考えるのか

総人口に占める65歳以上の割合が24%となり、「超高齢社会」に突入した日本。国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、2025年にはその割合は3割を超える。
この動向と歩調を合わせるように障害者数も確実に増えている。「平成25年版障害者白書」によればその人数は次の通り(カッコ内は「平成15年版障害者白書」)。▽身体障害者366万人(351万人)▽知的障害者は54万人(45万人)▽精神障害者は323.3万人(204万人)。高齢化と身体障害者の数は相関にあるため、今後さらに伸びることが予想されている。つまり日本にはいま、高齢者や障害者とともに社会の仕組みを再構築していくことが求められているのだ。
そのあり方を定めた障害者基本計画。政府は13年9月に策定した新計画で向こう5年間の基本方針を定める中、引き続き通常の企業などで雇用契約に基づいて就業や在宅で就労する「一般就労」を促進することを明記。もちろん農業も無関係ではなく、むしろ重要な働き先として位置付けた。
障害者の農林漁業での実雇用率は1.83%(厚生労働省の13年調査)。これは昨年4月の改正前の法定雇用率1.8%をクリアしている。ただ、障害者雇用を伸ばしていくには農業者側の意識は高いとはいえないようだ。
農研機構・農村工学研究所が2008年に農業法人1700社(回答数476社)を対象に実施したアンケートでは「大変関心がある」は19.4%。一方、「あまり関心がない」は32.5%、「わからない」は40.6%となり、関心の低さがうかがえる。
また、一部の調査研究を見る限り、高齢者の雇用についてはその意義が農業者間で認識されており、彼らは今後も継続する意向を持っている。実際に高齢者だけでなく障害者を雇っている農業者の声を聞いてみると、経営の発展に大きく寄与しているようだ。論より証拠。まずは先駆的に彼らの雇用を進めてきた3人の経営者を紹介したい。

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