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特集

障害者や高齢者らとつくる農業経営


ミニチンゲンサイの定植にも新たな発想が投じられた。通常であれば養液に浮いた発泡スチロール製のパレットの穴に、スポンジに生えた苗を差し入れる。ただし、その深さが間違っていたり傾きがあったりすると、その後の生育がうまくいかない。
障害者でもこなせるようにと開発したのは、穴が特殊な形状をした発泡スチロール製のパレット。パレットの穴の上で苗を放せば、自動的に適度な位置にはまるようになっている。なぜなら地元のJAとぴあ浜松に特注で生産を委託する苗も、この穴に適した形状にしたからだ。これで初心者であっても、いきなりプロと同じレベルで仕事ができるようになった。このシステムができたことで、年間の収穫は10回から17回に増加。現在の出荷量は日量2万本。これを3万本に増やす計画を立てている。
ところで、このチンゲンサイ部門はもともと障害者の仕事を作るために10年前に始めた。スタート時のメンバーは農業素人の健常者1人と障害者4人の計5人。彼らとどの野菜を作るかを模索する中で、ワンカットだけで調整できるチンゲンサイに着目した。JAとぴあ浜松は国内最大の産地で、育苗センターを備えているのも条件が良い。鈴木によれば、チンゲンサイの品質の8割は苗の良し悪しで決まる。育苗作業をJAに任せてしまえば、あとは調整するだけでいい。それがワンカットで済むなら、障害者でも健常者と変わりなくできる。
作業を分解したことで、効率が大幅に上がった。これにはおまけがある。チンゲンサイの定植なら苗1本当たり70銭といったように、それぞれのコストが把握できるようにもなったのだ。
素人ばかりで一から始めたチンゲンサイが今では部門成長率でトップの7000万円を売り上げる。鈴木は、この成功で3つのことが証明できたという。一つは、「農業がもうからないというのは事実に反する」こと。もう一つは、「障害者が農作業をするのにハンディはない」こと。最後は、「お客さまではなく働く人に応じて作物を選択してもいい」のだということ。
最後のことは、例えばミニチンゲンサイを指している。既述したように地元のJAはチンゲンサイの大産地だが、農家は小さいサイズは作りたがらない。定植数が多くて非効率だからだ。でも、一部の障害者は単調な作業を得意とする。福祉施設で就労を担当した後、京丸園に昨年転職した内山美穂(27)さんは「例えば精神障害者は他人がいると気になって仕事にならない。一方、定植など一人でこつこつと作業をすることに向いている」と説明する。

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