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新・農業経営者ルポ

「絶対差」のコチョウランづくり


目下の課題は高騰する電気代への対応。夏場、冷房のために稼働させるヒートポンプの電気代は毎月400万円かかっている。中部電力が4月から大口需要者への値上げを決め、さらに負担が増える。花業界では電気代を抑えるために変温管理をする動きもあるが、「温度を変えたらどうしても花がダメージを受ける」と言う。だから、冷房は従来どおりかける。「特許の関係で明かせない」というが、省エネのための対策を検討しているところだ。
それにしても松浦は勉強熱心である。こちらが取材しているというのに、逆に渥美半島の農業者の様子や視察すべき農業者のことなどを聞き返してくる。それに全国100近い生産者のもとを訪れただけあってフットワークが軽い。
「海外に行くって言うと、カミさんがときどきついてくるっていうんだけど、僕があんまりにあちこち回るから、疲れて嫌になってしまったみたいだね(笑)。この間なんか鉢のメーカーを中国でもう1社確保しておこうと思って、広州交易会に参加した後に片道460kmを車で往復しましたよ。360kmは高速道路だったけど、残りは山道。それも日帰り。経営を発展させるには、そこまで体を使うわけですよ」
松浦はコチョウランの前に観葉植物を作っていた当時から、園芸業界の将来を探るため、海外の動向には常に目を向けてきた。ただ、今は販売先としても関心を持っている。すでにシンガポール、香港、ドバイ、ロシア、ドイツへコチョウランを輸出した実績を持つ。
秀昭によれば海外進出を進めるのは次のような理由からだ。
「『日本のコチョウランはすごい』というのを世界にわかってもらいたいんです。欧米ではコチョウランは贈答用というより、自分が日常飾って楽しむという感じ。日本のように1鉢1鉢に手をかけるようなことはしない。だから、うちの商品を持っていくと、『造花みたいだね』って言われるんです。それぐらい日本の品質はずば抜けている。それを世界に認めてもらえば、日本農業を盛り立てることにもなる。もちろん、国内向けにうちの商品のアピールにもなりますね」
秀昭自身、海外での展示会で寄せ植えを披露するなど、海外へ積極的に宣伝に出向いているそうだ。

施設園芸の発展に向けて

豊橋市のある東三河地方には売上が1億以上の農業経営体がごろごろいる。なかでも松浦園芸はトップクラス。それだけずば抜けた経営をしていても甘んじることなく、秀昭はもっと幅広い世代や人々にコチョウランを楽しんでもらうことを願っている。海外進出もその一環。「そういう意味では今年は勝負をかけられる年だと思う」と語る。2年前に導入した染色の技術が安定して生産が軌道に乗ってきたからだ。

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