ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

編集長インタビュー

先物は必要、農協は有益な情報を開示せよ

主食用米の生産面積を配分する減反について政府が5年後の廃止を決めたことで、需給を反映する新たな仕組みの構築が喫緊の課題になってきた。2011年に試験上場した先物取引がその役割を担うことが期待されるも、JAグループの反発から取引が低迷。農水省から本上場の認可を受けられるかどうかが危ぶまれている。試験上場から率先して参加してきた秋田県JA大潟村の小林肇組合長に、米先物取引の意義を本誌・昆吉則編集長が聞いた。 (まとめ/窪田新之助)

新しい市場としての可能性

昆吉則(本誌編集長) 小林組合長は、農協界がボイコットしてきた米の先物取引に率先して参加してきましたね。
小林肇(JA大潟村組合長) ええ。実際に参加してみて思ったのは、先物は新しい市場としての可能性を十分に秘めているということです。米価の乱高下は大規模農家ほど経営に直結しますので、リスク回避という点からも大切です。それに今後、米価は下がることはあっても上がることはないわけですから。2011年に試験上場が始まる数年前にも同様の話が持ち上がりました※。当時、私は農協の専務をしており、米の先物取引に詳しい島実蔵さんを招いて勉強会を開いたんです。これに農家は結構参加しましてね。大潟村の農家は経営者ばかりですので敏感なんですよ。結局、その時に試験上場は実現しなかった。けれども、2011年になって当時の政権与党である民主党が試験上場を認めた。これに農協界は色めき立ちましたね。先物なんかあったものじゃない、と。
昆 とんでもないということですね。
小林 ええ。投資家に身ぐるみはがされるぞ、というようなインフォメーションばかりで。農協はリスクを強調するばかりで何の有益な情報も出してこない。私も素人なりに勉強して考えてみましたが、儲け損なうことはあっても損することはない。自分が値を決めて売買が成立した場合には、相手も大手なので代金はきちんと回収できるんです。その年の9月中旬でしたかね、東北・北海道のトップセミナーに全中の冨士専務が来られまして、その時に「先物取引はどうして駄目なんだ」と聞いたんです。頭ごなしに駄目というけれど、農家にとってはいいことであるかもしれない。それなら勉強させるべきではないか。最終的に判断するのは農家でいいでしょう。勉強させずに「駄目だ、駄目だ」では農家は利口になりませんよ、と。それで喧嘩になりましてね、冨士専務は「だったらあなたがやれ」と言うんです。だから私が先物取引を始めたのは全中公認というわけなんですよ(笑)。
昆 なるほど(笑)。
小林 それで参加してみて思ったのは、これも一つの大きな市場で、なおかつ代金回収が可能だと。売ってもいいんですが、駄目だったら買い戻す機能もある。下がるなら売っておけばいい、上がるなら買っておけばいい。そういう市場です。投資家は利ざやだけを稼ぐのでしょうが、農家としてはそういう市場の存在を知っておくことが一番重要。だから参加したことをみなさんに伝えておくべきだと思いまして、私のブログに書いてお知らせしました。先物は収入確定の見通せる安定した市場であって、それをどう使うかは経営者が判断すればいい、と。
昆 さきほど全中公認とおっしゃられましたが、先物取引を始める過程で農協グループからの圧力はなかったんですか?
小林 全然ないですね。一回だけ、これは圧力ではないんですが、県内で米の先物取引の実例として発表した時に全農の職員が来ていました。あれっと思って、びっくりしたんですが。その後、特段の反応はなかったですし、圧力もないです。
昆 ただ今のお話を伺っても、はっきりいって全中と全農の罪は非常に大きいですよ。
小林 確かに稲作経営者にとっての立派な市場にも関わらず、そういう市場を教えないというのは農業組織として疑問ですね。それが全農自身のためだったとしたら……。
昆 まさしく全農のためですけどね。
小林 農家への背任行為。

関連記事

powered by weblio