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シリーズ水田農業イノベーション

子実トウモロコシ国内生産の産業的意義

本連載では、子実トウモロコシの国内生産の可能性について、統計データを読み解き、実証試験の詳細を伝えてきた。当初は飼料用原料として注目してきた需要先も、非遺伝子組み換え品である価値を見直すことによって、食品や飲料用などにも広がることが分かってきた。今回は、これまで伝えてきた内容を整理して産業的な価値についてまとめた。
今月号では、現在そのすべてを輸入に依存している子実(穀物)トウモロコシを国内生産することの意義について改めて整理して、考えてみたい。

トウモロコシ輸入価額は
2012年貿易赤字の5.8%

繰り返しになるが、ここでいう「子実トウモロコシ」とは、飼料あるいはコーンスターチ原料となる穀物としてのトウモロコシのことである。我が国ではスイートコーンは約2万5000ha、サイレージとして使われるデントコーンは約9万2000haで生産されており、作物統計も存在するが、穀物収穫を目的としたトウモロコシに関しては調査が行なわれていない。自家用の雑穀として一部の農家で作られている以外では、本誌読者らが実験的に生産しているに過ぎない。その面積は、筆者が把握している限りでは2013年で北海道の長沼町と栗山町などで25~30ha程度、府県では秋田と岩手での合計3ha程度で、統計的に見ればゼロといっても差支えはない。
しかし、世界的に見ると、その生産量は約8億tを超え、主要穀物である小麦、コメ、大豆などをはるかに凌駕する世界で最も生産の多い穀物なのである。また、米食が主体のアジアの国々でもトウモロコシ生産が急増している。
トウモロコシが我が国最大の輸入農産物であり、その輸入量は1300万tから1600万tで推移し、12年の輸入量は1464万t。トウモロコシの年間輸入額は単価や輸入数量により変化するが、その額は4000~4500億円である。同年の平均輸入価格は2万7374円/tだから、その輸入金額は約4010億円に上る。そしてこの金額は12年の我が国の貿易赤字6兆9410億円の5・8%に相当する金額なのである。
アメリカ経済復活によるドル高とアベノミクスの円安は為替の面から輸入価格の上昇を懸念させている。また、中国及びアジア・アフリカ諸国の経済発展はトウモロコシ需要を急増させており、市況のひっ迫による価格高騰も予想され、輸入単価は短期的な凸凹はあっても3万円/t以上で推移するだろうという業界関係者は多い。そうした環境のなかで、我が国は中国などの他の国々に買い負けをする事態もあり得ると語る人もいる。
貿易収支や食料自給率を云々する以前に、畜産業に限らない我が国のトウモロコシ需要産業は危機にさらされているとも言える。

収益性高いトウモロコシ生産

すでにこれまでの連載で詳しく紹介した通り、現在の水田飼料作に対する交付金3万5000円があれば輸入トウモロコシに対して競争力のある形で国内自給が可能である。交付金支給が前提となっているわけではあるが、その額は飼料稲に支払われる最大10万5000円という交付金額と比べればはるかに小さな財政負担で飼料の国内自給と農業のイノベーションが実現する。
すでに昨年12月号と1月号で紹介している内容であるが、本号だけをご覧の読者のためにトウモロコシ生産の収益性について簡単におさらいしておこう。

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