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新・農業経営者ルポ

水生植物で築いた現代の「癒しビジネス」


「同じことをやって市場に出荷したところで二束三文ですよ。私が作ったマーケットだから、他の人は入りようがない。それにこんなにたくさんの商品をそろえることは普通の農家にはまずできない。言うたら、うちは種苗会社でもあり、生産会社でもあるところに強みがあるんです」
こうした岩見の商才はDNAとして受け継がれてきたようだ。父方の叔父たちは一人残らず商売人。父親も商売をしたかったものの、やむなく家業の農業を継いだ。だからこそ、50年前の当時にあってみれば、随分と先進的な売り方を始めてきた。農協の花き生産部会には加入していたものの、系統出荷は一切しない。代わりに卸や生け花専門の花屋、各流派の家元に直接販売してきた。
「当時は華道がにぎやかだったし、女性なら花嫁修業もあったしで、今とは違って生け花が盛んだからとにかく売れましたね」
岩見が小学校低学年のころ、父親は多いときに1日で30万円を稼いでいた。サラリーマンの年収がようやく100万円を突破した時代にである。
「1日30万円というのが1、2カ月続きましたか。当時の年商は3000万円ほどありましたね。今は3億円だけど、そのころのほうがずっともうかっていたような気がします」
そういったこともあって岩見自身、大学卒業後は銀行勤めをしたものの、4年で辞めて27歳で家業を継ぐことにしたのだ。その後、今でいう水生植物の専門家だった大学教授に師事し、独力で事業を切り開いてきた。

新機軸の美容商品

年商について続けて触れると、冒頭で触れたように杜若園芸の将来目標は現在の30倍以上の100億円である。すでに圧倒的シェアを誇る水生植物をさらに伸ばしたところで、とてもその金額に手が届くはずはない。そこで2年前から新たな商品づくりを始めている。なかでも今後推し進めるのは美容関連で、真っ先に目を付けたのはハスだ。その実には抗酸化機能がブルーベリーの4倍含まれている。つまり、老化の防止に役立つのだ。
収穫したばかりの薄緑色をしたころなら生で食べられ、栗のような味がするという。杜若園芸は、時間を置いて黒っぽくなったこの実で加工品を開発している。帝国ホテル大阪の元料理長監修でトマトソースにしたり、実の粉末を混ぜて麺やジェラート、あめにしたりしている。ハスの葉は茶葉にして売っている。来年には真打ちの化粧水を発売する予定だ。食べてよし、肌に塗ってよしというわけである。

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