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特集

小さな顧客と価値を共有する経営者たち


そのオリジナルブランド作りに向かった背景と、そのブランドを通じて個人顧客の拡大のためにどんなプロモーションをしているのかを紹介したい。

【相場低迷と風土条件による経営の厳しさ】

まず、荻野製茶が置かれている環境を説明する。
昨今の輸入増加や志向の変化によるお茶の相場低迷の中、日本最大のお茶生産地の静岡県にさえ耕作放棄地が出ているのは周知のことだろう。荻野氏によると、相場はこの10年で約3分の1に落ち込んでいるという。
「昔はお茶の値段が高かったので、早場所(早い時期に茶摘みできる地域)では、1反で120万円ぐらいになったし、1町歩あれば十分食べていけたそうです。今、県内でも茶畑用の送風機(防霜ファン)が立っているのに茶畑はないところがある。やめたんでしょうね。切実です。市場に出しても価格が抑えられているから、赤字で続けられなかったんでしょう」
静岡茶の産地は、大きく分けて静岡県中西部と東部とがある。荻野製茶の茶畑は後者で、静岡県東部の富士市の山間部にある。相場低迷の前から、早場所の倍ぐらいの面積を持っていないと経営は成り立たなかったという。
4代目の政治氏が、親から荻野製茶の経営を引き継いだ15年ほど前は、所有している茶畑は3haだった。少しずつ下がり始めた相場を見て、将来、お茶はもっと下がると予想した荻野氏は、お茶が収穫できるようになる5年の生育期間を見越し、所有していた林野を開拓したり土地を借りたりして茶畑を6haに拡大した。
一般的な静岡茶は、ゴールデンウィークのころに一番茶の出荷は終了する。一番茶は、時期が遅くなるほど相場は下がっていく。標高が高い山間部はお茶の栽培に適しているとされながらも、茶摘みシーズンは他の静岡茶よりも遅い。荻野製茶も山間部にあり、収穫は5月20日ごろまでかかるため、市場での競争条件は厳しい。さらに、霜が降り、痛手を負うこともあるという。

【環境に負けない個人顧客への販売】

そのような厳しい環境下の経営には、販路の選択が大きく影響する。
近隣のお茶農家が農協を通じて出荷している一方で、荻野製茶は、静岡にある問屋と近隣の個人顧客に販売している。その割合は、問屋が7割、個人顧客が3割である。
問屋とは斡旋所を通じて取引している。斡旋所は、他の問屋との取引も斡旋してくれるのでリスク回避になる。
「今、取引のある問屋さんは代々の付き合いになります。問屋さんは大事にしていますよ。他の問屋さんに、一番茶のシーズンが終わった後にお茶があるからといって、突然『うちのお茶、買ってください』って言っても買ってもらえませんから。今の問屋さんとは契約しているわけではないんですが、うちを信用してくれているので収穫時期の最後まで買ってくれます。ありがたいことです」

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