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特集

小さな顧客と価値を共有する経営者たち


現在では、飲食店とも取引がある。きっかけは、8年ほど前に雑誌に掲載されたことで複数の問い合わせを受けたことである。そのときから、販路として真剣に取り組むようになった。それまでも飲食店との取引の経験があり、自分たちの経営に合う取引先とはどんなものかは、なんとなくわかっていたという。
「取引先はチェーン店ではないお店が中心です。野菜は季節によって変わるし、たくさんの量は出せない。けれども他とは違う野菜が入手できる、という点を理解してくださるお店が僕たちに合っています」
このようにして、現在の経営スタイルが形作られてきた。今でも常に、マーケットを観察したり、顧客の声を聞いたりして経営に反映させている。
「セットの中身は、お客様のニーズや世の中の状況を見ながら変えていっています。量が多すぎるな、とか、今はお得感を求めているな、とか。値段を下げて中身を減らしたり、ボリューミーなものにしたり、数年単位で変動しますね。この形が正解、というのはないと思います」
直販をするメリットは、直接マーケットの声を聞けることだという。
「おいしいと言われるのはわりと簡単なことだと思っています。でも、人を介して売っていると、おいしくないという声が届きません。『おいしい』の反対は『無視』なんです。これは農業に限らずどこの業界もそうだと思います。直接売ると、『おいしくない、高い、汚い』とか言われます。それが嫌なので改善するわけです。品種が悪かったのかな、収穫の時期が悪かったのかな、と。それで、もう一度食べてもらって、また要望を聞く。つまり、直販をするだけで、自然にPDCA(Plan:計画、Do:実行、Check:評価、Act:改善)のサイクルができます。答えはお客さんが教えてくれるのです」
以上が、久松氏が身をもって経験し、作り上げてきたマーケティングである。

【「人」に価値を置いたプロモーション】

久松農園としての『ウリ』の中心は、「人」であるという。作る人と食べる人の関係性を大切にしている。
「僕たちが得意としているのはコミュニケーションです。その意味では、伝えることも農業だと思っています。例えば、都内の飲食店とは距離も近いので直接コミュニケーションできます。飲食店さんがお店のお客さんを連れて農園に遊びに来ることがあります。もう一つ、僕たちは本当に楽しいんだ、というのも大事なことです。楽しんで仕事をしているのをガラス張りにして顧客からも見えるようにしています」

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