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特集

小さな顧客と価値を共有する経営者たち


Case2
小川農園/柏市で作り柏市で売る経営

本誌の連載「ムシキング・小川幸夫の虫の世界から見る農業」の筆者でもある小川幸夫氏(39)の経営を改めて紹介したい。小川農園は、千葉県柏市で何世代も農業を続けている旧家である。柏市の住宅街にある1・2haの圃場で少量多品目の野菜を生産し、市内で直販している。ムシキングの異名を持つ小川氏は虫を活かした農業にこだわっていると同時に、市内で販売することにもこだわっている。その経緯と理由を聞いた。
小川氏には、虫のほかにもう一つこだわりがある。柏市で作った野菜を、地元の柏市内の人に食べてもらうことである。柏市内で直販するようになった経緯、販路開拓ができる強さの源、そして同じ志を持つ地元の人々とのネットワークを紹介したい。

【柏市で野菜を作る苦労】

柏市で作ることにも苦労がある。
一つは、先祖代々の土地の場所が理由である。小川農園は、柏市の市街地からほど近い住宅地にある。農業推進地域ではなく、住宅地として扱われている地域なので税金面で不利となってしまう。近隣の多くの農家はもともと持っていた土地を手放し、圃場を移転している。しかし、小川農園は、先祖代々の土地を守り、農業を続けるという選択をした。
「農業経営として考えると場所は悪いわけですよ。でも、ここでやろうと思ったわけではなくて、ここでやっていたからです。本当は、先祖代々、というのに縛られちゃいけないと思いますし、やりやすいところでやるのが正解だと思います。頑ななだけなんです」
この逆境が、小川農園の持つ資源を活かした栽培方法や販路開拓を工夫した経営へとつながっている。
「普通のことはやってないですし、やらないようにしています」
もう一つの苦労は、東日本大震災の際の原発事故の影響がある。これは、柏市にある小川農園にとっても大きな影響であった。柏市は、放射性物質のホットスポットとして騒がれた地域である。柏市の外部の人よりも柏市に住む人たちのほうが、市内で作られた食べ物に敏感になり、買わなくなったという。
「原発事故以降、苦戦しています。売上はそのとき随分減りました」
しかし、柏市で作り、柏市で売るというこだわりは変えたくないという。
そもそも柏市で直販するという経営スタイルに至った経緯を小川氏は次のように語った。

【地元、柏市でできたつながり】

現在の野菜の販売先は、直営の直売所、柏市内の直売所、小規模な飲食店、小売店、朝市などである。これらの直販の始まりは、自宅前の道路に面した直営の直売所であった。

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