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特集

小さな顧客と価値を共有する経営者たち


「直売所を始めたのは20年前です。うちで作ったものがうちの前の直売所で全部売れたんです」
直売所を始めた直接のきっかけは、それまで出荷していた県内の青果市場での相場低迷である。それまでは、小川農園はネギやダイコンだけを生産し、個選品として市場に出荷していた。しかし、あるとき、セリにかけられることもなく、売ることができなかったネギとダイコンを持ち帰り、自分たちで売ろうとトラックに載せて走った。しかし、それでも売れない。
「そこで、自分の家の前で売ってみたら売れたんです」
直売所で予想以上に売れた理由を小川氏は次のように考えている。
「当時はまだ大型の直売所もなかったので、直売所は珍しくて、面白くて、真新しいことだったんでしょう。『そこの農家の、小川さんちで作っている野菜』ってお客さんがわかっているから売れたと思います。安く売ったことも、喜んでどんどん買ってもらうきっかけになりました」
次第に少量多品目を生産する現在のスタイルに至る。
「他の野菜も売ったら売れました。売れるから品目を増やしていき、いつの間にか、少量多品目の野菜生産をするようになりました。お客さんが欲しい、売れる野菜を作ってきたということです」
現在は、直売所にとどまらず、柏市内にさまざまな販路がある。
最も大きな販路は朝市で、6カ所で年間250回ほど出荷している。ほかに、柏市の大規模な直売所である「かしわで」、個人経営の飲食店15~20軒、地元の高級スーパーである京北スーパー1店舗などである。京北スーパーでは「小川さんの野菜」コーナーが設けられている。また、総菜の食材としてデパートの高島屋柏店とも取引がある。
すぐ近くには東京、横浜などの大消費地があるが、地元の柏市で販売することにこだわり続けている理由を小川氏は次のように話す。
「地元の人たちに、地元に農業があるっていうのを知ってほしいです。野菜を作るのは楽しいだけではなくて大変なことも知ってほしいです」
前述のように柏市で作ったものを柏市内で販売することには苦労が伴う。しかし一方で、ここ数年、個人経営の飲食店との取引が増えたという。
「販路は、毎年変わってきましたが、原発事故の後も取引してくれるお客さん、個人の飲食店さんとのつながりが強くなりました。なんの見返りもなく紹介してくださる方々が多いんです」

【僕の野菜の価値は「変わった人」が作っていること】

知人の紹介によって販路が広がるという小川農園の強さの源は何かを考えると、それは、「僕、マニアックなんで」の一言がしっくりくる。それが小川氏と小川氏の作る野菜の価値である。

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