ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

紀平真理子のオランダ通信

なぜ日本人はMade in Japanにこだわるのか?(2)

日本人が「安全・安心だから」と国産品を選ぶのに対し、国産品を選択するよう努めているオランダ人の購入理由は異なる。30歳以上の収入レベルの高いオランダ人は、「国や地域の経済を支える」ためや「輸送距離が短いほうがCO2排出量が削減できる」という観点から、国産品を選択しなければならないと考えている。
この発想が昨今、ヨーロッパでトレンドの「Urban farming」(都市型農業)につながるのだと理解した。とくにオランダ人は、海抜0m以下に位置する国のため、地球温暖化による海面の上昇で国が沈むリスクを他国よりも懸念しており、環境問題に注力している。また、輸入食品の安全性に関しては昨年、ヨーロッパで馬肉トラブルがあったにせよ、「オランダ(ヨーロッパ)に入ってきている時点で安全であると信じている」という回答があった。これは、国民が検疫制度を信頼していることを表している。
一方で、20代の若い世代は原産国を気にせず、そもそも気にしようと考えたこともない人が多かった。大学生や大学院生は安くておいしいことに越したことはないというのがその主張で、「価格の高い理由が明記され、それに自分が納得でき、なおかつ味もおいしければ購入する。国産だから高いというのは明白な理由にならない」と論理的で実利的なオランダ人らしさ全開で語ってくれる人がいた。
ただ、オランダ人やオランダに住む外国人にも購入NGの原産国があるのはたしかである。とくに有機栽培にこだわるグループには、政治的理由での不買運動や化学薬品を多く使用していると考えられる国(中国やアフリカがよく例に挙がった)からの作物はできるだけ買わないよう努めている人もいた。たとえば、中国産の野菜をイタリアで瓶詰めして「イタリア産」のラベルが貼られているケースや、アフリカで育てた苗をヨーロッパに持ってきて「ヨーロッパ産」とうたうケースから、原産国が信頼性を失ったことで購入NGになるという点は、日本人が食品トラブルが重なった中国産を好まない理由と同じだ。さらに話を続けると、「オーガニックの種や苗を使用しているとうたっていても農家の腕が悪く、化学薬品を多用しているケースもあるし、反対にアフリカ産と書いてあってもオランダの農家がアフリカに移住して育てた作物を逆輸入するケースもあるので、とにかく自分自身で判断することが大切だ」と冷静に教えてくれた。

関連記事

powered by weblio