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実践講座:したたかな農業を目指す経営管理 入るを計り出を制す!

投資其ノ三 新規作物の導入を考えるときの脳トレ法

「チャレンジ精神」とは困難なことに積極的に取り組んでいく姿勢と態度。その美しい言葉の響きとは裏腹に、経営では速やかに採算を整えて利益を高めていかなければ、新規作物を導入しても意味がない。
一本気な職人気質も嫌いではないが、新規作物に挑戦するときは、経験のない生産工程の管理、情報の収集、商品として販売し換金するまでの経営管理が求められる。何より儲けを目論み、投資した財を回収する、これが第一優先だろう。そうでなければ、世代を超えて培ったノウハウや資本財のある既存の作物から転換する意味をあまり持てないように思う。
我が家は、食糧増産期にすべての畑を水田に整備しコメ農家となったが、複合経営としておよそ20品目の新規部門に取り組んできた。祖父や父の経営転換・新規導入の理由は、その時どきで種々様々だったようだが、生き残りたい=儲けたいという気持ちが原動力だったそうだ。苦労もあるが、家族を見ていて、新たな船出は思いの外楽しいことだと感じてきた。今では水稲はなく、施設園芸と肉牛繁殖の複合経営である。我が家の経験も踏まえて、新規作物の導入を考えている方に役立つ、心構えと試算計画について解説する。

背水の陣では難しい

たとえば、キュウリを止めてトマトを導入するのであれば、同じ施設園芸で施設や生産資材も共用できるものが多く、ハウスでの仕事の経験や育苗技術や品質管理のノウハウも当然生きてくるだろう。それよりは、キュウリの栽培方法を有機栽培に変更する(JAS認証を取得する)ほうが、難儀することが多い。転換期間中は商品力も高まらないし、培った農薬を使う慣行栽培の経験が、かえって方法転換の邪魔をしそうな気もする。通常の水稲栽培から合鴨農法への転換だと別の作物といってもいいだろう。新規作物の導入に限らず、商品力アップが目的の栽培工程の変更も難易度は高く、新規作物の導入と同様の心構えが必要である。
また、資金繰りに切羽詰まっているときには、新たな挑戦は厳禁である。新規作物の導入は、軍資金不足での成功はほぼあり得ない。

市場性と粗利益を目論む!

ひと昔前は、地域の振興作物から何かを選ぶというのが新規導入の常套手段だっただろう。ところが、栽培への工夫や市場へのアプローチ、消費者ニーズの把握に長けて、成功している経営者の諸先輩の取り組みを拝見させてもらうと、どの作物でも儲けをつかみ取ることができると実感する。同じ作物を同時に導入しても、経営者の手腕次第で黒字にも赤字になるのである。そこでトマトを具体例に取り上げ、新規作物導入検討の脳トレを紹介していく。
テレビCMでリコピンのサプリの原料はトマト。健康志向、ミニ、中玉、加工用などの品種開発などが追風となり、トマトの1世帯当たりの消費は増えている。外食業界からも堅調な需要があるが、全国の作付面積はおよそ1万3000haで、減少傾向にある。ただ加工用である中間素材のピューレや缶詰の輸入は、国内生産で応じられないためか、この10年で2倍となっている。一般的に流れている情報だけでも、どうやらトマトは消費が伸びている品目と思えてくる。なんとなく市場性に自信が持てそうで、これに化粧品も登場したら、最高である。
多少思い込みでもかまわないから、最もらしい根拠を見つける。導入作物の市場性を読むこと、これを最初の作業と心得よう。ただし、考えすぎるといつまでも導入できない。市場性の検討は自信が持てたら、適度に終わらせることが肝要である。

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